2ペンスの希望

映画言論活動中です

小津ごのみ:「わたくし 狡いんです」考

言うまでもない、1953年『東京物語』の極めつけ台詞。小津ファンにはつとに有名。 ネットには、深読みの考察が幾つも並ぶ。 あまた出版されてきた小津本にも様々な解釈が‥ぞろぞろ。 なかで高橋治『絢爛たる影絵』をはじめとする「性的深読み」について、中…

小津ごのみ:「おじさまごっこ」

女の人で小津映画がしんそこ好きという人は少ない。そもそも見ている人自体少ない。 ⇓ 「小津調映画」には、「結婚」「家庭」はあっても「恋愛」はない。つまりはメロ度の乏しい映画である。女の人たちに人気がない理由の第一はそこにあるんじゃないか。 ⇓ …

小津ごのみ:カタチでありナカミでもある‥

「形式(かたち)であり、内容(なかみ)でもあるようなもの」小津監督にとっての「表現」とはそのようなもの、だったと思う。中野翠さんはこう書いている。 中野翠が描いた「本文カット」から勝手に引用 「悪趣味なものは出てこない。だから生々しい迫力には欠…

小津ごのみ:一貫モダニスト

「女たちのきものと帯の柄は徹底的と言っていいくらいグラフィックデザイン的だ。絵画的ではなくデザイン的。作り手の個性などまったくない。無名の人々が歴史の中で作りあげて来た幾何学的な柄だ。たとえ花鳥風月が題材になっても、絵画的なタッチではなく…

小津ごのみ:ドンゴロス

生誕120年 歿後60年とあって今年も小津関連本が次々刊行されている。研究者・信者が世界中に生まれていることは当ブログでも何度か触れてきた。小津映画に込められた深淵(深遠)なる思想を微細・精緻に分析・解析した(と称した)「研究」が陸続と発表され…

ゾッキ本 いや めっけもん だった

ご近所の古本屋さん=口笛文庫の店先には いつも 税込み100円の格安本が並んでいる。いわゆるゾッキ本。ひと山いくらの処分品のたぐい。 先日 こんな一冊を発見。税込み百円。即買い。 中野翠 著『小津ごのみ』【2008年2月 筑摩書房 刊】 PR誌「ちくま」連載…

〝新しい〟映画を見た

久しぶりに地元で公開初日の映画を見てきた。船橋淳監督作『過去負う者』 チラシを三つ挙げる。多分 古いものから順 予告編は五つ。 www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com残念ながら、どの予告編も物足りない。…

映適マーク

不勉強丸出しだが、2023年4月に「映適マーク」がスタートしていた。 知らなかった。 どの程度の実効性と意味・意義があるのかは分からない。ポンコツのロートルには正直 はなはだ 疑問だ。イマドキ「カチンコ」だなんて‥センスも疑う。「メガホンをとる」同…

上の句 下の句

備忘録。 高崎卓馬という電通のコピーライターさんがFMラジオで小津映画について語っているのを「読んだ」。(ラジオを聞いたのではなく、ネット記事で見つけて「読んだ」だけ) 小津映画の手ほどき 初級編(として勝手に転載) 「リズム」がある 小津作品っ…

アート驚く‥‥

当たり前の話だが、同じ映画でも公開される時期時代によって宣材ポスターも変わる。 1963年製作 1964年日本公開の映画『軽蔑』の公開時ポスター。 主演女優さんとそのハダカ 押し。監督さんは二の次。 2023年秋 デジタルリマスター版での再上映。(敢えてリ…

映画的演劇だった

先回の「暴言です」の素 くだんの映画『福田村事件』を観てきた。週末の神戸 朝9:40からの上映。公開から8週目に入っての朝一の回、102席のキャパ に25席以上が埋まっていた。興行的には健闘 好成績の部類だと思う。出演者の一人水道橋博士の「ツイッター…

暴言です

今回は暴言。観もしない映画についての懸念を書く。ゴメンナサイ。 映画は、森達也監督の『福田村事件』杞憂は、二つ。「いかにもの図式・構図・構造におもねてシナリオの彫琢が中途失速していないか」と「コチラ側の意識高い系の人たちに届けば御の字という…

なつのと冬実

よんどころない事情もあって「映画館」にはトンとご無沙汰してもっぱら漫画本ばかり読んでいる。といっても流行りで人気の新作なんかじゃない。中心は昭和から平成にかけての旧作セレクト集。漫画は若い頃からそれなりに目配りして読んできたつもりだが、ま…

道典さん

深尾道典さんが2023年9月22日に亡くなった。知らなかった。87歳だったから人生的には大往生の部類だろうが、映画人生的にはどうだったのだろう。 初監督映画『女医の愛欲日記』(1973年 東映京都)は封切りで観た。白石奈緒美が主演した変な映画だった。 ま…

建造物としての映画②

先回の続き。建築・建造物としての映画。 日本の映画が「木造建築」だとするなら、ヨーロッパの映画は「石造り」、ハリウッド含めアメリカ映画は、さしずめ「鉄とガラス・コンクリート製」ということになろうか。 映画好きの同好の士とそんな話で盛り上がっ…

建造物としての映画①

映画は建築・建造物に似ている。 監督≒棟梁を軸に、構造部門の職人衆(脚本部や撮影部 録音部)と造作担当の職人衆(美術セット、装飾小道具衣装持ち道具、照明部、特機‥等々)さらに給排水・電気ガス・空調設備、外構・庭木・植栽まで幅広い専門パートがよ…

頽廃して 退廃して 胚胎するかな

漢字好きの友人からこんな話を聞いた。 「頽廃(頽癈)」と「退廃」はもともと少し意味が違う言葉だったのだが「頽」の文字が当用漢字に入らなかったため、代用流用され区別がつかなくなったんだ。 彼曰く 「頽廃」とは〝くずれる〟ことであり、「退廃」とは〝…

ものすご~く大雑把だけれど

ものすご~く大雑把だが、巨視的にみれば、映画はそもそも最初は、見世物・娯楽だった。誕生当時は高級でも高度でもなかった。それが先人たちによって洗練され、技法・技術が開発され、工夫が重ねられて、「良い」と評価されるものが生まれ、箔や折り紙が付…

何だかなぁ

ずらり並んだ「制服」リカちゃん人形。 タカラトミーと同窓会サポート会社「サラト」のコラボ商品。懐かしの母校のブレザーやセーラー服・オリジナル制服を身につけたリカちゃん人形。夏服 冬服 からジャージ体操服 ソックス ローファースニーカーまで揃って…

いい加減にせんかい

当ブログ 2012年の1月に始めて、めでたく今回で2000回を迎える。 まわりから「いい加減にせんかい」とあきれられながら、あきらめきれずに、日本の映画のあしたにつながるべく、あくせくあがき続けてあしかけ12年、あきもせず、よろよろ だらだら ぶらぶら …

敬遠なしで千本ノックを

今日は、はてなブログ仲間、ponymanさんとエールの交換。 ふや町映画タウンのオーモリ店主さんと温めている「映画1000本ノック」のことをご自身のはてなブログ『日常整理日誌』に採り上げていただいた。 ponyman.hatenablog.comroppanakurasikkueiga そうな…

骨まで愛して、骨ましゃぶる。

骨まで‥‥とくれば、さて? さしずめ昭和歌謡ファンなら、♬城卓矢あたり、昭和映画フリークなら加藤泰だろう。何の話かさっぱり分らん チンプンカンプンの御仁は勝手にググるか、近隣のお爺ちゃんにでも訊いてみて。 昨今の、「構造も造作も何もかもが、少し…

22ND CENTURY EARLY SUMMER

レストア版が人気だ。デジタルリマスター版が盛んにつくられる。 現存するフィルム素材(16mmマスターポジや原版ネガや35mmプリント等)を4Kでスキャンしデジタル変換、封切り公開当時検閲で削られた部分をオリジナル版に近く復元したものだ。 レストア版…

前を向くために…後ろを見る‥!

あれこれあって、一カ月余りも経っちゃった。お待たせしました。んっ?誰も待っちゃいないよ‥ですって。だよね。昭和老人の備忘録的与太話日記。どなたも何も期待されてなんかいない‥んなことは百も承知だ。 ただ、当ブログ 回顧録でも懐古自慢でもない、ど…

映画監督?映画作家?

「映画監督っていうのは職能なんだよ。つまり東宝の映画監督、松竹の映画監督みたくね。おれの時代、映画監督というのは映画会社に入社して演出部に配属されて助監督になって、試験を受けて監督へと昇進していくものなんだ。それ以外に『映画監督』になる方…

敬老割引

そうなんだよね、トム・クルーズ 御年61歳、ハリソン・フォード 御年81歳。トムの2022年公開の『トップガン マーヴェリック』は、1986年製作の『トップガン』から36年ぶりの続編。ハリソンの2023年夏のシリーズ第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイアル…

著述業Kの『レビュー大全』

そうか、小谷野敦も還暦超えなのか。『レビュー大全』【2023年5月30日 読書人 刊】を見た。文字通り見ただけ。読んではいない。なにせ本文とあとがきで569頁 巻末索引が66頁もある。 2012年3月から2022年12月まで4000日にわたって読んだ本1764冊・見た映画・…

simple is best! 二択 四択 

映画の見方なんて十人十色、千差万別、様々。作り手の意図・狙い・思惑・工夫を超えてどんどん拡がりどんな解釈・楽しみ方をしようと勝手だ。好きな音楽を何度も何度も飽きずに楽しむように、くり返しみたくなる映画もたくさんある。 最近は、「一回見ただけ…

鈴木さんの丁半ばくち

アニメはほとんど見ないのだけれど、巧妙な事前広告戦略に乗せられてまんまと劇場に足を運んだ。都会の駅前シネコン、平日の夕方、304席の大箱、公開三週間目を過ぎて50%以上が埋まっていた。こんな入りのいい映画館は久しぶり。 鈴木敏夫プロデューサーの…

シアタードーナツ in 沖縄コザ

永年経営してきた名画座映画館が廃業するとニュースになる。健闘を称え惜別の思いが語られる。"また一つ街の文化の灯が消えていく"とかなんとか‥。 けれど、新しいスタイルのユニークな映画館が出来てもあまりニュースにはならない。採り上げられることは少…