2ペンスの希望

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映写室

四十年ぶりに映写室から映画を覗き見た。35mmの映写機と16mm映写機が並んだ狭い映写室から映画を見たのは、大学時代以来だった。埃っぽく狭い空間、フィルムの匂い、機械油の匂いなどを嗅ぐとゾクゾクワクワクする感覚が蘇ってきた。通っていた大学には35mmの映写機を2台据えつけた講堂があった。フジセントラル社製のカーボンアーク灯。春と秋には毎週のように学内で映画会を開いた。学生だけでなく、近所のオッチャンオバチャンも楽しみにやってきた。立派な映画館である。プログラミングからブッキング、宣伝、映写、モギリまで皆自分たち学生でやった。フィルムは配給会社から駅止めの「チッキ」(託送手荷物)で送って貰った。それをタクシーで運ぶ。学生時代、タクシーに乗ったのはこのフィルム運びの時だけだったと記憶する。一番お客が入ったのは、大島渚監督の『日本春歌考』だった。小さな映写窓から覗くと、立ち見立ち見で毎回黒山の人だった。興行の真似事だったが、自分たちの選んだ映画でお客が入る快感を始めて知った。反対に興行的に惨敗だったのが加藤泰監督の『男の顔は履歴書』。田島和子は大学生に受けたが、安藤昇はサッパリだった。