2ペンスの希望

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目年増?

予告編の方が面白かった、というのは珍しいことではない。

白黒無声映画、白いリムジン、ファナティックな乞食、謎めいた美女、ミュージカル、仮面、オスカーという名前‥‥ファンの気をそそる映画的意匠(衣裳!)には事欠かない。しかし、いざ脱がしてみると大した肉体ではなかった。そんなことはよくある話だ。今さら裸は貧相だったと嘆いても後の祭り。騙された自分を恥じて反省するしかない。いや反省する必要もなかろう。そんなに出来のいい新作が転がっている筈もないのだから‥。
予告編は騙して誘って金とってナンボ、責任は無い。ただ、映画的知識(教養?)をひけらかして思わせぶりな言葉を吐いて、何かを言ったつもりになっている「若い衆」(ん?誰のことかって?いえ、なに、最近やたら多い映画研究家や映画評論家あたりだと思っていただければ‥うにゃむにゃ)がいささか鬱陶しい。もっともそれだってイイ歳をして騙されるオッサン(拙のことだ)の方が悪い、といわれてしまえばそれまでだが‥。
作り手の手抜き、力量不足を補って、自らの映画的知識(教養)で繕ってあげる、生煮え・消化不良な作物を過剰に物分りよく受け止めてしまう「お客さん」が目立つ。

おんぶに抱っこで何も考えない「お客さん」=映画に暇つぶしの娯楽・一時の刺激(感動!)を求める観客、と、
何でも分かってあげようと優しく親切な「お客さん」=映画に過剰な意味を読み込み、人生の糧にしようと意気込む観客、

もはや映画館にはこの二種類の観客しか棲息していないのか。
大人の観客は沈黙して沈潜しているのか、はたまた絶滅したのか。
耳年増ならぬ目年増ばかりが増えるのでは健康上よろしくない。何度も書くが「鼻毛を抜かれている」ことは百も承知のつもり。