2ペンスの希望

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対案を具体的に示すこと

映画『麻雀放浪記』で一緒に脚本を書いた澤井信一郎さんが和田誠さんにいった言葉。
うまく書けてないとか、掘り下げが足りない、なんて誰だって言えるんですよ。
大事なのはじゃあどうしたらいいかってことを具体的に示すことです

【「麻雀放浪記」前夜:『シネマ今昔問答・望郷篇』201頁 2005年12月新書館 刊】
よほど印象的だったのだろう。『新人監督日記』【1985年5月角川書店 刊】はじめ同じエピソードを何度も書いている。澤井さんはこのことを師匠マキノ雅弘から学んだ、と
和田さんに語ったそうだ。
もうひとつ。
麻雀放浪記』と伊丹十三監督『お葬式』はほぼ同時公開だったことから、新人監督として二人して湯布院映画祭に呼ばれた。そのときの話。
上映後のシンポジウムで、客席に居た伊丹さんが手を挙げて「この映画のいいところは‥‥」ってメモを見ながら「雨の降らせ方。反物が空を飛ぶカット。ニの二の天保ワンカット。‥‥(以下略)その他いっぱい挙げてくれた。嬉しくなってあとでそのメモを記念にくださいと貰って、
「具体的なイメージだけを言ってくれましたね」って言ったら、答えは「映画の話を抽象的にするのは嫌だからね」っていうことだった。

            【「公開、そして」:前出『シネマ今昔問答・望郷篇』222−223頁】
現場を踏む者、映画を知る者の言葉だ、と感じた。