2ペンスの希望

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塩田本『映画術』

塩田明彦さんの『映画術 その演出はなぜ心をつかむのか』【イースト・プレス2014年1月刊】を読んでいる。ある専門学校での講義を纏めた本だ。ところどころ分からない箇所(ご当人も「勝手な妄想」が混じってると言明している:150p。あと、どうみても障子なのに襖と誤記している箇所が何度も出てくるなどの瑕疵もある:13p19p21p)があるが、具体的な映画のシーンを例に挙げながら「役者の演技と演出が出会う場所から映画を再考する」という試みは半ば以上成功している(ように思う。)
かの『ヒッチコック/トリュフォー 映画術』に名前負けしていない充実を感じた。
講義の中で参考上映された映画については、観ているものも未見のものもあるが、
豊富なコマ割り写真(ショットの連続写真)が載っている。(写真の印刷も質感をたたえて美麗だ。)お陰で映画の画面展開が目に浮かぶ「親切設計」になっている。
ただ、塩田明彦さんご自身の映画、不勉強で一本も観たことがない。よって彼の「映画」がどれだけ面白いかは分からない。願わくば、「本」の質と中身に見合った水準の面白さであってほしいものだ。「頭高腕低」でないことを願う。「映画」はさておき、「本」の水準は、以前読んだ『俳優の演技訓練 映画監督は現場で何を教えるか』【三谷一夫編著フィルムアート社2013年6月刊】とは雲泥の差だった。塩田本の勝ち!
思えば三谷本も、どこかの専門学校の演技科コースの講義の書き起こし本だった。
こうした本を読んでいると、
日本の専門学校でどんな質の授業・講義が行われているかが透けて見えてくる。
一言で言えば、玉石混交。講師陣に有名どころ(監督さんはじめ映画では喰えない映画人たち)をズラリと並べ、卒業すればすぐにでもプロになれるよ・明日からあなたも映画人!と煽る(嘘八百を並べ立てる)非道い学校もあれば、地道で誠実・良心的なところもあるようだ。貴方がもし映画学校に進もうとしている若者ならよくよく研究して学校選びを間違われないよう祈る。(何処が良質校なのかさっぱりわからん、教えて欲しい、という方はコメントでも貰えばそれなりにお応したい)