2ペンスの希望

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実録路線 急

三日目

東映京都 脚本:高田宏治 監督:深作欣二 撮影:中島徹 美術:井川徳
編集:堀池幸三 音楽:津島利章 助監督:篠塚正秀 (1977年2月26日封切り)

予告編には渡瀬恒彦が出てくるが、撮影中の事故で降板、本編には登場しない。
他にも色々因縁・いわくつきの映画であることは、伊藤本『映画の奈落』に詳しい。
映画は―なかんずく東映映画は―その時々のスキャンダルや事件をライブ感覚でつかみ、モデルを食い散らかし、客に強い興奮をあたえる見世物に仕立てることによって、危険な匂いのする見世物であるからこそ観客が飛びついて来るのではないか。それはある意味では、人間性への冒瀆でもある。しかしそれこそが、映画が見世物小屋で上映されたという原初形態が孕む、原罪ともいえるものであり魅力ではないのか。
伊藤さんの筆はいささか大仰だが、永年東映映画を観てきた一人として、下記の指摘は面白かった。
『北陸代理戦争』はいままで、「実録路線のスワンソング白鳥の歌)」「プログラムピクチャー最期の輝き」などと、ともすれば「最後の映画・(何かを終わらせた)フィルム」として語られがちであったが、ここから八〇年代「東映やくざ女性映画路線」がスタートした「始まりの映画」でもあるのだ。
笠原和夫は?男たちの仁義なき戦い?を書いた。それを高田宏治が?男と女の仁義なき戦い?へと書き進めた。
それにしても三本それぞれ。監督と音楽以外 スタッフは皆違う。
プログラムピクチャー・娯楽映画を作ってきた撮影所時代のスタッフ層の厚みを感じる。ただ、後出しじゃんけんで気が引けるが、三本目は失速している。 予告編はいかにもスタティックでおとなしい。役者の貫目も違う。