2ペンスの希望

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「贅沢産業」

日本映画の衰亡は誰の目にももう見えている。いや、なくなるわけではなく、恐竜が滅亡しても爬虫類の蛇や蜥蜴のように残るが、矮小化しつつあるものに未練や拘りを持っても仕方がない。
脚本家橋本忍さんの言葉だ。書いたのは1993年7月頃か。所収は、シナリオ作家協会編『橋本忍 人とシナリオ』【(兵庫県)市川町橋本忍記念館のよる復刻 2004年7月】
引用部分はこう続く。
映画は以前からの私の理論―大衆娯楽ではなく、贅沢産業になり生き残れるに急傾斜しつつあり、今は全盛のアメリカ映画をも含め、知能と資金を集約する贅沢産業への道しかないのだ。
 二年ないしは三年に一度は世界的に大当たりの映画があって、中形のユニークな映画、小型の野心作も生誕の条件が整い、特殊な一国ローカルものも萌芽の芽を息吹く。‥‥

20余年を経て、橋本さんの予言 当たらずと雖も遠からじというところか。「贅沢産業」という言葉は、ハリウッドを睨んでの命名だろうが、むしろ「趣味・道楽産業」とした方がよさそうだ。「娯楽の王様」と威張れたのは遠い遠い昔話、今は隅っこでうろちょろしている迷子、みそっかす。
趣味は無数にある。それなりの商売にはなる。けど、道楽で食っていくのはむちゃくちゃ難しい。ホビー・ビジネス。相反背馳。矛盾撞着。だが、ホビーだと開き直って、ビジネスを放棄するのはよした方がよかろう、よろしかろう。