2ペンスの希望

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「路地裏で林檎を磨いていく」

荒川洋治さんについては、何度も書いてきた。
十七歳の頃全国組織の詩の同人誌を創り、大学卒業後は編集会社に勤めながら詩集専門の出版社「紫陽社」を興し四十年二百六十冊以上の詩集を作ってきた。
発行部数は二百部以下が多いので、全部あわせても五万冊程度。」と語るが、それに続く自負の言葉がすがすがしい。
誰もお客さんが来ない路地裏で、くだものか何かの店を構えているとします。でもいつお客さんが来るかわからない。そのために林檎なら林檎をつねに磨いておく。突然お客さんが来ますからね。急に来たとき、粗末なものは出せない。普段はお客さんがほとんど来ない店でも、ちゃんとした仕事をしておく。‥これからはかなりきつい時代ではありますが、やはり 路地裏で林檎を磨いていく。 いつ人が来るかわからない、けれどそのときにあわてないように、‥」(2007年7月28日東京よみうりホール講演「詩と印刷と青春のこと」より 一部を抜粋)
吟味して人の詩集を出版することもまた まぎれもないひとつの自己表現なのだ。