2ペンスの希望

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浦沢の本

浦沢直樹さんの本『描いて描いて描きまくる』【小学館2016年2月 刊】を読んだ。
小学館の若い担当編集者生川遥さんの12時間余り14万5千字インタビュー本だ。

原作者とのタッグなど、面白く読んだ。
今の漫画が雑誌編集者との“二人三脚”から生まれる(からしか生まれない)ことなどが良く分かる。浦沢ファンの間では良く知られたことなのだろうが、元小学館の担当編集者にして原作者:長崎尚志さんとの30年以上にわたる関係性あっての浦沢漫画。
長崎さんと僕は、『古きよき時代の漫画や映画にあるものを、今の時代にもう一度鳴らすことができないだろうか研究会』みたいな部分があるんですよ」と語っている。
こんなくだりもあった。
おじさん的な目線で考えると、僕らの時代が一番面白いところをずーっつと目撃しちゃって、おいしいところを全部いただいちゃって、若い人たち、なんかごめんね、俺らばっかりいい想いしちゃってね、、という気持ちなの。もう君たちの時代に残されたものなんて何もないよ、というぐらいの気持ち。
本音を言ってしまえば、もう出尽くしたよという感じなんだけど、でもそれとは裏腹に、絶対に何かあるからあきらめるなと思うよね」「(電子書籍を読むメディアの)誰も思いついていなかった新しい使い方を思いつけって、毎日思ってる」「何か別の使い方、誰もまだ思いついていない何かはないのか、という気持ちがあるよね
映画の世界も似たようなものだとも思う。
遊び倒されて、荒れ果てた遊園地。若い世代、新しい才能が出にくい時代。
けど、いつの時代もそうだったというのもまた眞実だ。
昔は良かった、凄かった、という繰り言は醜い。
「あわてない」「あせらない」そして「絶対にあきらめない」こと。
ロートルロートルなりに古ぼけた感性で、でもそれなりに年季の入った感性で、日々精進を重ねるだけでいい。