2ペンスの希望

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間接の思想性

今日も備忘録。
漫画における思想性は、その漫画の中に織りこまれる思想そのものによるよりも、むしろ、自由な思想の行使にとって不可欠なしなやかさを保つための、思想の屈伸体操を提供することにある。それぞれの漫画作家は、独自のツボをこころえたあんまのようなもので、各人各様のこわばりかたをする知性に対して適切なあんまをこころみる。だが、同時代の学問や芸術の諸様式が直接の思想性を失ってゆく時、漫画は、知性のあんまとしての間接の思想性だけにみずからを限定できなくなってきた。‥‥
どなたの文章か?ですって。半世紀以上前、鶴見俊輔さんが雑誌「展望」の発表した「『ガロ』の世界」【1966年1月号】の一節。
知性のあんま」「間接の思想性」「思想の屈伸体操」‥‥
漫画も映画も、その思想性は「間接」「あんま」に(こそ)ある。
   このことを忘れないでおきたい。
「学」としての漫画・映画より、「楽」としての漫画・映画。
論じるより、まず楽しめるかどうか、それが勝負どころ だろう。