2ペンスの希望

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贅沢な中途半端さ

情けないが、映画を見るとストレスがたまるのが敵わないので、本ばかり読んでいる。映画にまつわる本も多い。中身の濃厚・浅薄 玉石混淆は、映画も本も事情は同じだ。最近読んだのでは、映画史・時代劇研究家という肩書を持つライターの単行本『泥沼スクリーン』はダメだった。申し訳ないがいただけない。大学の先生が中心になって書いた『川島雄三は二度生まれる』【水声社 2018年11月20日 刊】はいかにも大学の先生らしい一冊だったが、それなりに面白く読んだ。(毎度毎度エラソーな物言いでゴメン)川島雄三は、小津、黒澤に次いで本に書かれることの多い監督だ。喜劇から文芸大作までなんでもござれのやとわれ監督、生き急ぐように映画を作って45歳で歿した。正体不明の掴みにくさ、捉えどころのなさが物書きの情動を刺激するのかもしれない。

表紙が管理人お気に入りの映画『洲崎パラダイス 赤信号』のロケスナップというのがなによりだ。

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川崎公平「序」と末尾の山田洋次インタビュー「鋭さと優しさと」から、何カ所か引用。

川崎の「序」から→「十九年間で五一本。川島は、撮影所を渡り歩きながらしかしそのその外に出ることは決してなく、優れたスタッフと達者な俳優と贅沢なセットを縦横無尽に活用しながら玉石混淆の作品群を慌ただしく撮り、そのまま日本映画の黄金時代のなかで死んだ。‥‥日本映画史に正典として登録されるような作品も時折つくりもしたが、にもかかわらず最後まで「いい加減」(引用者註:評論家上野昻志のことば=「川島雄三の場所」『季刊リミュエール』第四号1986年)であり続けたそのフィルモグラフィーには、「職人」にも「作家」にもなり切らない、何か贅沢な中途半端さとでもいうべきものがある。

山田洋次インタビューから→「面白がられすぎたんじゃないかという気はします。どんなにつまらない映画でも一応観客が入ったいい時代だから、そういう点で川島さんも甘えて仕事ができたのかもしれませんが、」「遊びすぎ」「映画好きの人たちは喜ぶ映画だけれど、落語で大笑いするように映画観客は笑えただろうかということ。映画好きに面白いことは間違いない。そういう意味で、川島さんは玄人好みの監督なのでしょう。」「気に入ったものはどんどん取り入れていくという意味では、画家でいえば横尾忠則さんみたいな人です。コラージュのように色んな手法を取り入れるというかな。そして、ハチャメチャな喜劇からしっとりとした文芸作品まで、全部を観てみればたぶん底の方に、しっかりした人間観察が、誠実に人間であろうとした人の姿が浮かび上がってくる。」「つまり人間をきちんと見ることができる

山田洋次の映画は大嫌いだが、撮影所の生き残り。映画のコトも自分の力量・立ち位置・時代もよく解かっている人なんだなぁ 、と思わせた拾い物だった。

オマケ  ↓

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