十年ぶりに本『ドキュメンタリーの海へ 記録映画作家・土本典昭との対話』を読んでいる。【現代書館 2008年7月刊】刊行当時に読んでいたが、殆ど忘れている。
土本さんの映画は何本も見てきた。好きなのも嫌いなのもある。当たり前の話だが。本の末尾に、何が長く映画を作り続けるエネルギー・原動力になったのかを自問自答して、「いつもそこには考えることの快楽があった。」と書いている。
他に今回印象に残った言葉を幾つか‥。
◆何かを表現しようとする“狙い”のある映像はどんなに稚拙でも面白いが、単に撮れちゃったというレベルの映像は、(時代を経ると)珍しいと思うだけで、現在の時点で観るとつまらない。
◆一人で撮るのはありだけれど、できるだけ音を考える人と画を考える人とのチームを作るのが理想。音の表現力と画の表現力と自分の思想を三つ巴にする。
◆スタッフというのは自分以外の最初の観客。
◆映画はひとりよがりでなきゃできない。でも、それが他者に通用するかどうかは別。だから一緒に作って点検してくれる人がいるのが理想。
至極当たり前のことばかりだか、どれも腑に落ちる。足が地に着いた誠実マット―な実作者だったことが改めてよく分かる。【取るに足りない補足(蛇足?): 表紙写真の口から垂れ出ているのは16ミリポジフィルム。フィルム編集時代には、次につなぎたいカット(ラッシュフィルムといった)を口にくわえて編集するのが当たり前の光景だった。(ノンリニアパソコン編集ではありえない。今眺めればヘンな写真かも)】