2ペンスの希望

映画言論活動中です

音楽のように

f:id:kobe-yama:20210111123839p:plain


メモその三。「音楽のように

映画は、これから音楽の世界のよう享受・受容・消費される、そんな予感がする。

今の時代の映画ファンには、自分が好きな作品だけを何回も繰り返し劇場で見る人が増えています。かつて映画ファンといえば、いろんな映画を年に二〇〇本や三〇〇本も見る人のことでしたよね。でも今の人たちは、映画の上映をまるで音楽のライヴみたいに体験してくれていて、自分の好きな作品を「押し」として捉えている。関連グッズも買ってくれるし、‥‥」そう語るのは配給会社トランスフォーマーの國宗陽子さん。

かつて監督や役者で追いかけて見ていたのが、今は、気に入った音楽をCDや配信ダウンロードして繰り返し聴くし、ライヴイベントにも行く、ケースバイケースで楽しむスタイルになった。どうして何回も見てくれるのか訊ねた国宗さんに返ってきた答えは「この映画のことが好きで、世界観を深堀りしたいし、是非続編を作ってほしいからお金を落とす」だった。失礼ながら、握手券欲しさに何十枚何百枚とCDを買うアイドルオタクを思い出してしまったが、時代はそうなっているのだろう。好きなもの以外には目もくれずストライクゾーンが狭くなってるのが気にかかるが、時計の針は戻せそうもない。

f:id:kobe-yama:20210111151518p:plain

 映画に対するクレジットも変わった。「製作会社名もそうですが、現代の日本の映画観客はかつての輸入盤の音楽レーベルのように配給会社の名前を指標にされている方が少なくないのではないか」というフィルムアート編集部の指摘もある。洋楽レーベルやインディーズレーベル・自主制作はメジャーに対するマイナーではなく、それ自体がひとつの価値指標・ブランドになっているのだろう。ここでも垣根が消えている。