2ペンスの希望

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石ころのままで

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『そして映画館はつづく あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう 』【2020年11月 フィルムアート社刊】からもう一つ。

樋口泰人さん(1957年生)がPFF2020の審査員をした時のことを書いている。

作品としてのまとまりがなかったり伝えたいことをうまく伝えられなかったり今更どうしてこんなシーンを入れるのかとか‥‥それぞれに不満はある。だが‥それらは不満点もあったうえで今はこれしかないという絶妙なバランスで成り立っている作品なのだ。道端に落ちている石ころの面白さは、それがそのままそれであることによって成立する。今回選ばれた作品は道端の石ころではいし、意図して作られた完全な人工物なのだが、にもかかわらず石ころのような面白さを持つ何ものかとしてそこにあるのである。‥‥

 人に出会う出会うように映画に出会ったと言ったらいいか。人と出会うとき誰もものすごいことを期待してはいない。波長が合う人も合わない人もいて、友だちになれそうな人もなれなさそうな人もいるが、みなそれぞれ興味深い人たちである。

石ころのままで出会う。原石? 磨けば玉になるかもしれないし、そうでないかもしれない。只の路傍の石。 けど 何か匂う。どこか気になる。映画のミライはココにもあるのかも。