2ペンスの希望

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対談本 連続

映画とジャズをめぐる対談本を立て続けに読んだ。

一冊目は、瀬川昌久1924年 生)と蓮實重彦(1936年 生)の『アメリカから遠く離れて』【2020年11月 河出書房新社 刊】二人は学習院の先輩後輩だそうだ。

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どなたのアイディア・趣味なのか知らないが「学習院初等部の正門前にディレクターチェアを設えカメラ目線の老人二人」という表紙の趣向はなんだかなぁ。リッチでハイソな只の映画好き、ジャズ好きのお爺ちゃん・オールドシティボーイのぬる~いお上品連続対談。【2018年11月~2019年4月】それでも普段目にする書き言葉による持って回った衒学的文体とは違って、ところどころに肉声がそのまま聞こえてくるようで、面白く読んだ。

蓮實「国境を超えて享受することができる映画や音楽は、結局のところ、複製芸術としてしか、つまり映画もフィルムを介した複製芸術ですし、複製芸術を通してしか享受できない。ですから、‥‥これしかない、という単一的なものではなく、国境を超えて享受できる、もっともっといい加減なもののはずなんです。そのいい加減なものをもう少しみんなが真剣に考えてほしいなあというのがわたくしの気持ちです。‥‥ 日本でも何でもない、ジャズなり映画なり、そういうものをみなさんにもっと本気で見ていただきたいなぁと。それには、もっと本気で見るための方法を、わたくしがこれからどれほどできるかわかりませんけれども、考えなくてはならないと思います。

そういえば、依然京都の旧作VHS専門店「ふや町映画タウン」のオーモリ店主さんから「蓮實重彦は、いつかどこかで〈私は映画の女衒です〉と言ってたよ」と教えてもらったことを思い出した。もしかしたら八〇歳を越えて大先生「どこでこじらせたのかなぁ、こんなはずじゃなかったのになぁ」と悔やんでるのかも。

ロバート・ワイズ監督の白黒小品は評価するが、「ウエスト・サイド物語』は、まったくダメ。出演者みんながいい加減に踊っているのを断片的に撮って、後から編集すればみんなが踊っているようにみえるだろうという感じの映画。デタラメに踊っているところを編集でうまくつなげるとそれなりに見えてしまう。ということでカチンと来た。(引用者 要約)なんて好き嫌い丸出しの発言もあって御愛嬌。(表層派はモンタージュ・編集がお気に召さない?)

二冊目は、鹿児島でジャズクラブ「パノニカ」を経営していた中山信一郎(1936~2018年)の『泣き笑い 映画とジャズの極道日記』

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コチラの表紙は、優に6mを超える大看板の前に佇む若かりし著者のセピア写真。昭和の時代を彷彿とさせてずっとモダンで庶民的。遥かにチャーミング。(つづく)