2ペンスの希望

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求む 構造家

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建築の世界には、意匠・外観のデザインを担当する「建築家」とともに、その建築を支える骨組みをデザインするエンジニア=「構造家」がいる。「構造家とは、建物がそれ自体の重さで潰れたり、あるいは地震・台風などの災害で壊れてしまうことがないよう、安全かつ経済的に骨組みをデザインするエンジニアである。」(引用:平松剛『磯崎新の「都庁」戦後日本最大のコンペ』2008年6月 文藝春秋 刊)

「建築家」は広く世に知られるが、その陰に隠れ「構造家」の存在はあまり知られない。けれど実は必須・必至の存在なのだ。「見てくれ」を見えないところで確実に支える構造設計・力学計算の達人・プロフェッショナル・縁の下の力持ち。

映画は建築に似ている。シナリオ=設計図面、諸職の集団作業・共同性。少なからざるコスト、経済と表現の両立、‥‥。

映画のシナリオづくりにも「構造家」が欲しいなぁ。背骨のない軟体・軟弱な出来損ない、独りよがりばかりがはびこるのはご勘弁願いたい。つくづくそう思う。

なんだかんだ言ったってハリウッドには、筋書き・ストーリーを書くシナリオライターとは別に、物語・ナラティブライター、キャラクター設計、会話担当など20名規模の脚本家チームがことに当たるという話も聞く。貧乏所帯の我が国にそこまでは望まないが、せめて「構造家」くらいは居て欲しいものだ。

そういえば、日本の木造建築には昔から「構造材」と「造作材」の別があった。梁や柱などには水に強く狂いが少ないヒノキやヒバなどの「構造材」を、建具や意匠には、やわらかいスギなどの「造作材(化粧材)」と用途別「適材適所」の使い分けが当たり前だった。もっともなんでも全部ひとりで賄う「映像作家」さんには届かぬポンコツロートルの遠吠え・屁理屈・無い物ねだりなんだろうけれど。映画がどんどん痩せて貧相貧弱になっていくのを座視するに忍びないもので‥‥ついつい余計な繰り言を。