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単独歩行・映画=本

やっと届いたので、パラパラ読んでいる。上島春彦著『鈴木清順論 影なき声、声なき影』【2020年9月25日 作品社 刊】

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B5判 691頁 定価10,000円+消費税10%=11,000円。

一年ほど前に『映画監督・神代辰巳』【2019年10月25日 国書刊行会 刊】のことを書いた。対談・新規インタビューなどを含め、神代組のスタッフ・キャスト、評論家・研究者、信者ファン・取り巻きなど総勢135名が登場、寄ってたかって作った701頁の「労作」だが、こちら清順本は、1959年生まれの映画評論家上島春彦さんが一人で書いた691頁「単独歩行 本」だ。

一人の監督にフィーチャーした大部な映画本はこれまでにも、『映画監督 増村保造の世界 ー「映像のマエストロ」映画との格闘の記録』【1993年3月 ワイズ出版 刊】527頁はじめ幾つも作られているが、一人でというのは珍しい。よほど毒がまわったのだろう。大変な労働量だったと推察する。「おわりに」にこうある。

(上島)は氏(清順)とは『陽炎座』封切りの日、新宿野村ビル前の路上で著書にサインをいただいたことはあったものの、いわゆる面識というのはない。「面識なし」で書きたい、というのが本書の考え方の一つではあったが亡くなる前に世に出したいという気持ちは常にあった。それが叶わなかったには残念だったが‥(註:鈴木清順監督は2017年2月13日93歳で没。引用 丸かっこと太字は引用者=当 管理人による)

企画がスタートしたのは2007年、当初予定2000枚だったが結局3357.8枚(400字詰原稿用紙換算)の「長編大作」になった。十数年を経て、時代も映画もさらに変わった。三段組み本文最終 685頁にこんな一節があった。

世界じゅうどこでも今や産業としての映画はプロジェクト型の製作体制が基本となっている。映画会社が商品を定期的に生産流通するという比較的安価なやり方がない以上、つまり大作か低予算かの二極に分裂するしかないわけだ。」映画が何処に向かっていくのか‥未だ見えない。けど、立ち止まっているわけにはいかない。