2ペンスの希望

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大島渚『青春』

数日前、青春→朱夏→白秋→玄冬という季節は輪廻する、と書いた時、そう言えば大昔大島渚が『青春』という本を出していたなと思い出した。本棚をひっくり返して掘り出した。大光社語り下ろしシリーズの一冊 

1970年10月30日発行 ¥760.

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中味は全く忘れていた。ペラペラめくっていたらこんな言葉を見つけた。「青春とは自分の可能性を発見する時期だ、という人がいるが、ぼくは自分には何が出来ないかを発見していったプロセスが自分にとっての青春であったような気がします。

 

日本の映画世界が、何でもあり「思うままにふるまっても道を外れない」玄冬期の今を真摯に生き永らえ、再び巡り来る(であろう)次なる青春期が一回り大きくなって「何が出来ないかを発見する」謙虚で豊かな季節であらんことを切望する。

 

【どうでもいい蛇足: 大島渚が大学を卒業した時期は就職難の時代で、学内の劇団「創造座」で演劇活動をやり、京都府学連委員長も務めたが就職課活動では、朝日新聞社に落ち、旭硝子や倉敷レイヨンにも落ち、大学院に残ることも敬遠されて、偶然に受けた松竹の助監督試験に引っ掛かった、と語っていた。】