2ペンスの希望

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③ラジオの力

うろ覚えで申し訳ないが「テレビは情報の 終末処理装置」と言ったのはいとうせいこうだったと記憶する。もう三十年以上昔のことだ。テレビで採り上げられる情報なんてその筋の業界ではとっくに知られた出がらし情報だらけ、よってテレビに流れ始めたら、流行は尻すぼみ、もはやオシマイだそんな趣旨だった。その頃ちょこっとだけテレビ番組の現場を経験しはじめた身でしかなかったが、確かにその通りだと共感した。怠惰で傲慢不遜。テレビマン、とりわけキイ局の社員諸君には呆れたり失望することが多かった。もっとも出来のいい人に出会わなかっただけのことなんだろうが‥こりゃアカンと思ってしまった。その頃、ラジオ(民放中波)は落ち目=底だった。誰が聴くの、時代遅れのポンコツメディアとさんざん言われ続けていた。

当たり前だが、人気のラジオパーソナリティは全国にいる。多分どなたもそれぞれに懐かしく親しい名前がすぐに浮かぶことだろう。伊藤清彦さんは本『本屋と図書館の間にあるもの』の中でこう書いている。

さわや書店のころ、民放のIBCラジオというところで10年間本の紹介番組をやっていたんです。‥‥(中略)‥‥ 僕は本を売るというより、本を伝える。書店でありながら本を伝えるにはどうしたらいいかということばかり考えるようになって。ラジオはほんとにいい経験でした。賞を獲った本は一切紹介しない。そういう有名なやつじゃなくて、新人だけどこの作家はおもしろいとか、みんながあまり気づかないような本を紹介するんです。テレビよりラジオです。テレビは毎週2回、やっぱり本の紹介をやっていましたが、出てたねと言うだけで、本なんか誰も覚えてない。ところが、ラジオの場合は10分番組でしたがが、よく聴いてくれているんです。それは驚きでした。(44頁)

 昔、仕事をした時の高嶋ひでたけアナの言葉が今も耳に残る。

ラジオは沁みるんですよ

テレビよりラジオ、最近ますますその思いが強くなるばかりだ。

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