2ペンスの希望

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④本屋と図書館は敵 ?!

数年まえ、文藝春秋の松井清人前社長が全国図書館大会で呼びかけたお願いが物議を醸したことがあった。「できれば図書館で文庫の貸し出しをやめていただきたい。これがお願いです」

 2015年10月29日のブログに「出版業界の悲鳴も分からぬではないが、まるで矛先がズレている。そんな気もする。」と書いたことを思い出した。言葉は、やんわり控え目だが、「お門違いも甚だしい。本が売れなくなった主因はそんなところにあるんじゃない、大手出版社のトップがこんな認識でしかないとは、いやはやなんともオソマツ、情けない」本心はそんな辺りだった。自らの不調を近くの他者のせいにするのは世の常だがよした方がいい。それで事態が好転したり、問題が解決に向かう例は残念ながら少ない。

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正社員かアルバイトか、正規職員か派遣・非正規雇用のパートかを問わずに言えば、書店員も図書館員も、何らか「本」に惹かれるところのある人だろう。週刊誌や雑誌販売の主軸となったコンビニや駅売店の店員さんに同レベルの本に対する知識や理解、関心や愛情を期待することは難しいし酷だろう。コンビニはそういった人間関係を完全に遮断するところで成り立っている職種だし、そもそものミッションが違う。図書館員には過去に書店で働いていたりアルバイトした経験を持つ人も多い。書店や図書館で働く人は、間違いなく本に対する知識や理解、関心や愛情を持つ仲間なのだ。作家や版元・流通・販売・読者まで含め、すべては本という国に住む「読書人」なのである。(管理人は、映画をつくる人、見せる人、見る人、つまりは何がしか映画に関わり映画本位制で生きている人士はすべて「映画人」だと考えている。)

書店から図書館に転じた伊藤清彦さんも生前「書店と図書館はともに補完し合う関係なんだ」と繰り返し強調していた。

その昔、映画の世界にも「映画は映画館で観るべし」それ以外は邪道だ、と主張してやまない原理主義者が少なからず居た。正直に言えば管理人にも「その想い 分からぬでもない。そうだそうだ」と秘かに応援してきた過去がある。けど、残念ながら最近そんな声は聞かなくなった。(もっとも、今も黙っていそいそと毎日のように映画館に通う筋金入りの映画人も居られることは承知している。管理人の周りにもそんな頭の下がる人士が僅かだが居る。)

シネコンもミニシアターも名画座レンタルショップもTV放映も配信もいがみ合い、ののしり合うのではなく、「補完し合う関係」へと進駐する道を拓いてみることだ。

もっとも、野合・馴れ合い・傷のなめ合い・責任のなすり合いなんてのはゴメン蒙りたいが。