2ペンスの希望

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⑧数字を信じるな

今日も数字の話。但し、数字を鵜呑みにするなという伊藤さんの警告。

岩手日報の連載「いわての風」(2014/08/31)から引く。

 「一部の特定の作家だけが面白いわけではない。むしろ、まだほとんど無名に近い人たちの中に面白い作品が多い。しかし、現実には、テレビや映画化された作品やマスメディアで紹介された作品に読者は集中しすぎるきらいがある。それでいてベストセラーはつまらないと言う人がいるが、それはほとんど真実なのだ(逆説ではなく)

ばらしてしまうとベストセラーは意図的につくられることがある。大都会にある指標となる大型書店のベストセラーはさまざまに利用されるので、出版社や読者が大量買いをしてベストテンの上位に入れるということをしばしばやってきた。それが売れ筋情報として全国に流れる。うのみにすると、つまらない作品だったという感想が生まれるのだ。(太字強調 引用者)

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映画の世界でもよくある話だ。

食玩大人買い(箱買い)、押しアイドルCDの大量買いなんてのもある。

例えば西村京太郎さんは、今、書店ではほとんど売れてないんです。ところが、駅の売店とかで売れてるから、数字上は売れてる。その Sランク(引用者註:出版社の押し評価ランク)を信じて書店が入れると、何でSが売れないんだと。だから、統計の魔術なんですよ。それに気づけばね。

テナントに入っている書店のデータだと、『オレンジページ』関係とか『主婦の友』とかの料理本、そういうものが売れてるんですよ。ところが、まちにある本屋ではそういうものは全然売れません。そういう客層は来ませんから。だから、データをどういうふうに読むのかということも、みんなに教えたいんですけどね。‥‥ データにごまかされない。‥‥ ノーランクのところから、自分の店に合ったものを選んでいく作業。‥‥ 無名の中のこれはおもしろいというのを選んでいく。‥‥ 」(同じく 太字強調 引用者)

顧客を知れ。自分の目で当たれ、という当然至極な話。