2ペンスの希望

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Q「この映画で何を言いたいですか」「わかりやすい病」

テレビのドキュメンタリー番組が、映画館に掛かる例は昔からあった。デジタル時代になってさらに増えた。先回採り上げたTVドキュメンタリー制作者の番組も劇場で好評を博しているようだ。番組制作時や劇場公開時に開く記者会見についての記述が面白かったので挙げてみる。

この番組(映画)で何を言いたいですか」

 記者にそう質問されることが多い。最初は丁寧に答えていたのだが、だんだん馬鹿らしくなってきた。

「いま観たでしょ。それを書いてください。小説を読んで、作家にそんな質問しますか。画家に絵の意味を解説させないでしょ」

 作品を観てもなお、作者の意図を聞くというのは、どういうものだろうか。ただの番組宣伝の場だと思ってしまうと、そんなやりとりでいいのかもしれないが、記者との真剣勝負を求めているというのに、あまりの残念さに、つい辛辣なことを言ってしまう。しかし作品によっては、大笑いしたり、絶句したり、涙を流している記者もいるし、豊かな関係はできつつある。ただ、新聞もネットの世界も、「わかりやすい病」が蔓延していることは間違いない。

同感。同意。けど、こうも思ってしまった。

視聴鑑賞後の記者を揺り動かし「真剣勝負」に持ちこめなかった作り手の側の力不足にも思いを致すべきなのかも。「わかりやすい病」もいけないが、「わかってちょうだい病」だっていただけない。イタイ。痛々しい。

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〇か✖、白黒ハッキリしたものなんて、作り手にも受け手にもそんなに簡単に見つかるわけじゃないのさ。