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プチ・ブル 復権!礼賛?

「地べた」に生きるブレイディみかこさんの本『他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』から、さらにもうひとつ。 

 

ジェームズ・C・スコットの著書『実践 日々のアナーキズム 世界に抗う土着の秩序の作り方』(清水展他訳、岩波書店)を援用しながら、彼女は「プチ・ブルジョアジ―」に注目する。(ちなみに、スコットのこの本:原題は Two Cheers for Anarchism =「アナーキズムへの万歳二唱」だそうだ。「アナーキズムに万歳三唱まではしない(全面的にかぶれてはいない)が二唱までならできるよ、という意味」)それにしても、原著と邦訳書のタイトルのセンスの違いはどうだろう。皆までは言わないが‥。原題のままでは、お偉い先生方や、真面目な左翼陣営には売れそうもないけど‥‥。おっと、冒頭から脱線脱輪、横道にそれてしまった。

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 管理人の若かりし頃、プチ・ブルは、とても分が悪かった。

資本家階級にも労働者階級にも属さない、「どっちつかずで得体のしれない存在」(©ジェームズ・C・スコット)不動産を含む「自分の財産」を持つことにこだわる。だからこそ、「成金」「小金持ち」といった意味で侮蔑的な扱いを受けてきた(マルクス主義者だけでなく、貴族階級、知識人階級からも)。文字通り、「小規模な資本家」なのだから、一発当てて自分も大規模ブルジョアジーになりたいと思っているかもしれないし、資本家と呼ばれるわりには貧しいので左翼と手を組むこともある。いかにも忠誠心がなさそうで信用ならない、しかしある意味、自由な人々

(ふたたび三度 スコットを引けば プチ・ブルとは、小売店主や小規模自作農、小規模自営の専門職、熟練職人などのことだ。彼らは、支配者たちに「胃袋を握られる」(©東京山谷の企業組合「あうん」の発起人 中村光男)ことを拒否し、自分たちの土地や店や工房を持って、お上の声や指導、取り込み工作などを完全無視して、そんなに売れそうもない物の開発や効率の悪いビジネスをやり続ける。国に言いたいことが言えるようになるための「自立」の決断

 つれづれにググってみたら、こんな画像に出会った。

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1911年アメリカの漫画風刺画。そもそもは、ロシアのチラシのコピーらしい。

二十世紀初頭、まだ、プチ・ブルは見当たらない。

もう一枚、こんなのも。

こちらは二十一世紀の純国産。

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横溝友里さん(元サンエックス制作本部デザイン室所属デザイナー)のキャラクター

思えば、芸術家だって「俺たちゃ〈表現労働者〉だ」なんて気取っても、プチ・ブルの一員だ。

邪魔にならないように暮らすのが良さそう。あまり役には立たないかもしれないが、そのかわり 害も少なそうだし。