「細心にして大胆たれ」は渋沢栄一、「大胆さと細心さを併せ持つべし」は盛和塾稲盛和夫、いずれも経営の心得としてよく言われてきた言葉だ。加えて「先んずれば人を制す」先にことを行えば有利になる、先手必勝とも。確かに経営・経済の世界ではそうだろう。常に新しいことが求められる。大胆にして細心に、粉骨砕身して、最新を目指せ。
けど、表現・文化の世界はちょっと違うんじゃなかろうか。必ずしも新しいものに価値があるとは限らない。新作・最新作・前人未踏の新世界・新境地‥‥なんて言葉に踊らされてばかりでは馬鹿を見る。はかばかしくない。
目指すべきは、最新より最深だろう。「より新しく」より「より深く」大胆にして細心に、粉骨砕身して、最深に向かって掘り進んで、美しく見事な映画に出会いたいものだ。
そういえば、昔々 黒澤明監督の本にこんなのがあった。
彼だってきっと「最新」より「最深」に向かっていたはずだ。