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世代交代:ミニ・シアター

ミニ・シアターの草分けと言われてきた東京神田神保町岩波ホールが2022年7月29日をもって閉館するというニュースはちょっと前から聞いていた。

1974年の開業だから58年 健闘した映画館だ。座席数開業時232→220→現在192。故高野悦子さんはじめ、岩波律子さん、原田健秀さん、‥‥懐かしい名前が何人も浮かぶ。十数年前 映画『二人日和』の上映でお世話になった。

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館のHPには短く「新型コロナの影響による急激な経営環境の変化を受け、劇場の運営が困難と判断いたしました。」とある。新型コロナの影響ももちろんだろう。ただ、根はも少し深いところにあるような気がする。

ご存知のように岩波ホールは早くから「エキプ・ド・シネマの会」という会員制度を導入し会員を増やし耕してきた。「岩波Hでやる映画なら大丈夫。良品 間違いなし」といった岩波(ホール)ブランドも定着した。その会員が高齢化し、亡くなりつつあるのではないか。一方で、開業当時は乏しかった映像関連情報源は多様化し拡散した。若い人にとっては岩波ブランドはまばゆく敷居高くエスタブリッシュに過ぎるのではないか。そんな気がしている。残念なことだが、仕方がない。

一方で、コロナ禍でも、新しい映画館開館のニュースを目にする。

鳥取県東伯郡湯梨浜町の「jig theater」、

富山県富山市総曲輪の「ほとり座(新館)」、

島根県益田市あけぼの東町の「小野沢シネマ」

東京都世田谷区下北沢の「シモキタ‐エキマエ-シネマ K2」…… etc.

それぞれに、動機も事情も志も違うことだろう。ただ、「このコロナ禍の逆風のなか、苦戦を承知で」といったメディアの定冠詞・決まり文句尻目の《快走》を心から期待したい。

岩波ホール時代からバブル全盛期(前世紀)の「ミニ・シアター:雨後の筍」時代を経て、ミニ・シアター新時代へ。世代交代加速はウエルカムだ。健闘を祈る。

追記:会員制度と共に岩波ホールは、「日本で初めて各回完全入れ替え制定員制を実施」した映画館だった。正直にいえば、オープン当初は「気に入った映画は居残りして何度も観ることが出来て当然なのに、なんて高飛車な岩波商法。お高くとまりやがって」なんて悪態もついたが、半世紀経った今、各回入れ替え制はスタンダード、当たり前になっちゃってる。トホホだが、時代の趨勢。時は流れ、社会は変わる。