松下幸之助:このごろ、映画でも本でもマンガが流行(はや)っていますでしょう? なんでも、あまりむつかしいことは好まれませんなァ。
高峰秀子:ええ、他愛なくゲタゲタッと笑うようなものばかり受けますね。寝床にはいるころには、もう忘れてしまうような。世の中、そんなにセチがらいのかダレているのか知りませんけど‥‥。
いまは、自分の手の届かないものには、初めから寄りつかないんでsすね。‥(略)‥ 映画でも芝居でも、見るほうと見られるほうが競争して程度を下げているんですね。
月刊 『潮』1971年新年号に載った松下幸之助77歳と高峰秀子54歳の対談。「昼下がりの対話-7-」単行本『いつぴきの虫』所収。
昼下がりから半世紀、日本の映画界はいつ明けるとも知れない闇夜が続く。セチがらいのかダレているのか‥悪夢が覚めない。