2ペンスの希望

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正統と異端 直球と変化球 

つむじ曲がりのひねくれ者は嫌いじゃない。ただし、芸の無いのは困る。

昨今は、お気に入りの映画は何度も見るものだそうだが、(好みの音楽CDを繰り返し愛聴するように)初見・一発・一回見ただけでスッキリスックリ理解できるのが一番だ。どこかもやもやして何度も見直してはじめて深い意図・作意に気づくようなのは御免だ。独りよがりの生煮え異端はいただけない。傷んだ異端は遺憾でイカン。

かつて三島由紀夫は、御贔屓だった俳優鶴田浩二の映画『総長賭博』を褒めてこう書いた。「これは何の誇張もなしに「名画」だと思った。何という自然な必然性の絲が、各シークエンスに、綿密に張りめぐらされいることだろう。セリフのはしばしにいたるまで、洗練が支配しキザなところが一つもなく、物語の外の世界への絶対の無関心が保たれていることだろう。(それだからこそ、観客の心に、あらゆるアナロジーが許されるのである。)

頑迷固陋といわれようとも、変化球より真っ向勝負の豪直球を見たい。

フツウの大人なら一度でわかり、唸らせ、黙らせ、得心させ、ニヤリと笑わせられてこそ、映画。選良・選民だけが喜び、弄ぶような映画は遠慮したい。