役割を終えて「ミニ シアター」が退場し、新たに全国各地に「ミクロ シアター」が誕生し勃興が始まる!そんな予感がしてならない。(ミニとも言えない座席数30~50席の映画館をこれまでマイクロシアターと呼んで採り上げてきたが、以後「ミクロ シアター」と命名・統一する。)
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2021年7月 鳥取県東伯郡湯梨浜町に出来た jig theater については、以前にも何度か書いてきた。(劇場案内はコチラ⇒ information - jig theater )
廃校した湯梨浜町立桜小学校。汽水湖を望む丘の上に立つ三階建て。三階の図工室を改装して作った席数30ほどの映画館。階下にはアトリエや作業スペース・カフェなども併設されている。
初期費用は200万円弱。月に賃料約1万円と光熱費がかかる。(この情報は朝日新聞デジタル 2022年9月9日配信記事:佐藤美鈴記者 に拠る)開業から1年余りで延べ2000人を集客した。(この情報はNHK鳥取局 「いろ☆ドリ」コーナー企画「トリビューン」2022年7月20日OA:河野美鈴レポーター に拠る)「戸惑いを案内する映画館でありたい」がモットーだ。
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2022年9月16日 東京都墨田区菊川駅前に開業した「Stranger:ストレンジャー」
70余年続いてきたパチンコ店「菊川会館」を改築した49席のシアター。
「映画を観る」だけでなく、「映画を知る」「映画を観る」「映画を語り合う」「映画を論じる」「映画でつながる」という5つの映画経験ができるというのが謳い文句のようだ。東京という地の利と人材ネットワークを活かした取り組みであることがうかがわれる。(劇場案内はコチラ⇒ 劇場案内 - Stranger )
日本未公開作や上映権切れ映画の再買い付けなども含め、総費用は約7200万円、買い付け費用予算約1000万円はクラウドファンディングでお金を募る。(情報はクラウドファンディング プラットフォーム「MOTION GALLERY」の募集頁 から)
「Stranger」という館名の由来について、チーフディレクターの岡村忠征さんはこう語っている。
「着想はクリント・イーストウッド監督『荒野のストレンジャー』から(笑)。見知らぬ人、さすらう者を表すのが“stranger”という単語の意味で、僕はそうしたものに出合えるのが映画だと思っています。そしてこの地域になじみのない、僕こそが“ストレンジャー”。いずれはこの街の文化拠点として、根付かせていけたら」(ウエブサイト「さんたつ by 散歩の達人 」2022年9月16日 吉岡百合子取材・文より)
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もうひとつ、「Victory Theater」は、岡山県真庭市久世上町商店街の空き家を利用して2022年夏に本格始動した手作り映画館だ。
(劇場案内はコチラ⇒ about-us – VictoryTheater )
席数は25。不揃いでいかにも寄せ集め。中心になっているのは、真庭を拠点に映画を作り続ける山崎樹一郎監督と、地元の工務店河野文雄代表、東京から移住してきた柴田祥子支配人の三人。
事の次第については、このインタビュー記事( 空き家活用。真庭にミニシアター誕生!(ノーザンオカヤマのオモシロ人 vol.1続き)|衆楽舎 shugakusha|note )に詳しい。「Victory :勝利 勝ち」を目指しての命名、その心意気や良し!
映画の作り方の歴史が変わるように、映画の見方・見せ方も時代と共に変わる。そこで、例によって勝手ながら、「不見転(みずてん)」「独断と偏見」でミクロシアターの予測を並べてみたい。
◎劇場・シアター・ミュージアムではなく、ギャラリーのような位置づけと意味づけ。
◎常連客・会員・ファン・リピーターが支える「行きつけの場」「馴染みの店」
◎「目利き」「見立て」によるキュレーション。ガイド。ナビゲーション機能。
◎映画のセレクトショップ。
もちろん今回採り上げた三つだけでも三者三様、てんでんばらばら。恐らく、全国各地ではもっともっと多種多様なミクロシアターの試みが進んでいることだろう。従来型の興業・興行・大型ビジネスとしての映画館経営ではなく、小回りの利いたフットワークの良い持続可能な映画館運営がどう可能か、手探りの暗中模索が続くことだろう。
さて、冒頭にはこう書いた。
(歴史的)役割を終え(旧来の集客ビジネスが衰え 落ち目になっ)て「ミニ シアター」が退場し、新たに全国各地に(新しい事業スタイルで集客を目指す)「ミクロ シアター」が誕生し(陸続と)勃興が始まる!
もとより「勃興」も「陸続」も盛り過ぎだ。言い過ぎは承知している。前途は洋々ではなかろう。
けど、映画の見られ方の歴史に新しいフェーズを切り拓こうとしている「もがき」には願望を込めて共感する。エールを送る。勝利を切望する。