牟田都子『文にあたる』から少しはみ出して、今日は森銑三と寺田寅彦。
森銑三(1895~1985)は独学在野の歴史学者・書誌学者だ。
「書物には誤植がある上に、原稿の誤書があり、文字の誤用がある。その上に内容の誤謬まで数えたら、大抵の書物は誤に充ち満ちていることになる」
と書き、
しかし「寺田寅彦博士もいわれたように、『間違いだらけで恐ろしく有益な本』もないではない」と付け加える。
元になった寺田博士の一文はコレ。
「間違いだらけで恐ろしく有益な本もあれば、どこも間違いがなくてそうしてただ間違っていないというだけの事以外に何の取柄もないと思われる本もある。これほど立派な材料をこれほど豊富に寄せ集めて、そうしてよくもこれほどまでに面白くなくつまらなく書いたものだと思う本もある。」「読書の今昔」【1932 東京日日新聞 :随想集『科学者とあたま』所収】
容赦なき正論! 真っ向唐竹割り。
ホントにホントにおっしゃる通り。
箆棒で乱暴なのにチャーミングなのもあれば、正解ばかりなのにちっとも惹かれない優等生映画も確かにある。
科学と文学・映画の世界を自在に往来した寺田寅彦=吉村冬彦(1878~1935)については当ブログでも何度も書いてきたが、やっぱり面白い。あらためて脱帽。