2ペンスの希望

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黄昏‥‥⑥

⑥は山中貞雄 1909(M42)年11月 生。山中について上野が書いた文章は少ない。

山中貞雄の映画を思い出そうとすると、まず最初に、声が聞こえてくる。何とも伸びやかで上品なセリフ回しが、‥‥ 山中の映画で真っ先に甦ってくるのは、そこに出てくる役者たちの喋りぶりの、得もいわれぬ上品さである。

あの上品さは、昭和十年代中葉を境に、日本映画の中から失われてしまった。先頃亡くなった黒澤明は、年齢の点では山中貞雄のわずか一歳下に過ぎないが、デビューが十年余り遅かったために、その作品に、もはやこの上品さはない。贔屓目にみれば、かろうじて処女作の『姿三四郎(一九四三)には、その残り香のようなものが感じられるが、次の『一番美しく』(一九四四)にはない。そこには決定的ともいえる断絶があるのだ。(「図書新聞」1998年12月19日号)(太字強調は引用者)

管理人の近くにも一人、『姿三四郎』以外の黒澤映画を認めない映画人の友人がいる。近いうちにこの上野文章 見せてみたい。

小学館Bic spirits comics special [日本映画監督シリーズ] 漫画『小津安二郎の謎』より

「よい映画をこさえて下さい。」という言葉が胸を打つ。