2ペンスの希望

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黄昏‥‥⑯

⑯は黒木和雄 1930(S5)年11月 生。

上野には珍しくちょっぴり観念・抽象的、歯切れもよろしくない。

彼は、一つの視点一つの角度といったものでは決して満足しないのである。だが、おそらく、それを貪欲な作家というだけでは、言葉として不正確であろう。彼はむしろ、その間の迷いや揺れを含めて、あれもこれもの作家なのだ。AかBかではなく、AもBもであり、できればCから先もすべて見てみたいという‥‥。異質なものを混入させたいという根深い欲望があるのではないか、Aがあるならば、BだってCだってDだってあるという彼の複数への志向、いわば、一ではなくて、多なるものへ志向、「破綻」あるいは「失敗」への秘かなる願望、一種やみがたい嗜好があるように思えてくるのだ。

こう書いたうえで、

竜馬暗殺』(一九七四)は、誰が見ても成功した幸福な作品という印象がある

と書く。(1997年『映画作家 黒木和雄の全貌』アテネ・フランセ文化センターへの寄稿。よって当然ながら2000年以降の映画には触れ得ていない)

脚本(清水邦夫田辺泰志)を褒め、ニュース映画のようにとらえる田村正毅キャメラマンの起用を褒め、俳優陣を褒める。そうなのだ、映画を作っているのは監督だけじゃない。映画は いつだって コワーク、集団プレイなのだ。監督1人を論じたってダメなのだ。

ということで、クレジット・タイトルと導入部をご覧あれ。(下記サイト 下段では「予告編」となっているが‥クリックしてどうぞ)

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