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『嫌われた監督』:WBC

このところ新聞やテレビラジオで、WBCが盛り上がっている。悪いとはいわない。管理人もテレビ桟敷観戦を愉しむつもりだ。けど、正直な話、何だかなぁ~、の気持ちも湧く。「日の丸を背負って戦う」「日本のために精一杯頑張って貰いたい」「優勝期待」って、煽り過ぎじゃなかろうか。

少し前に読んだ鈴木忠平さんの本『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか【2021.9.25. 文藝春秋 刊】にこんなくだりがあった。

2008年の夏、翌年春のWBC第二回大会に向けて代表監督問題が、迷走していた。この夏の北京五輪で野球がメダルなしに終わったこと、そのためのバッシングが激しかったことなどから、既定路線とされていた星野仙一が就任を辞退、水面下での様々な動きが取り沙汰されていた。当時 日刊スポーツ新聞社勤務の鈴木忠平記者はデスクの指示を受けて落合博満(前年 中日監督として日本一を達成)に取材する。日本野球機構NPBから代表監督就任の打診があったかどうか?のウラ取りだ。落合は言下に答える。

そんな話は知らない‥‥。ただ、仮に話があったとしても俺はやらないだろうな。一生やらないと思う。他所のチームから大事な選手を預かって、無事に返す自信がないよ。勝つために無理させるのは目に見えている。そんなに神経使って、体力使って、体を壊したくねえよ

のちには、球場ネット裏の記者席で、こうも発言している。

プロ野手選手は球団の社員じゃない。NBPの社員でもない。個人事業主だ。もし大会で故障して、飯が食えなくなったら、誰が補償してくれる?

報酬や補償問題の整備抜きに、名誉だけを見返りに参加を求めるのは間違いだ、と。

正論である。「給料を貰って、愉快犯とマッチポンプをやっている辺見庸新聞記者社員諸君は沈黙するしかなかったようだ。

  *  *  *

見てくれ、当たり障りのないうわべだけを撫ぜて、国民的一大行事のように煽り立てるのは如何なものか。わかり易いところだけのつまみ食い。それだけなら、まだイイ。けど、挙国一致、翼賛体制に「右へ倣え」のマスメディア体質は、よろしくない。戦前そのまま、まったく変わっちゃいない。いい加減うんざりする。