親しい友人と会うと、何か新しい映画見た?というのが挨拶がわりになっている。
それぞれが最近観た映画を披露する。新作もあれば回顧上映の旧作もある。
映画館至上主義じゃないのでDVDも混じる。そして今や懐かしのVHSも‥。あるとき、改まって「この三十年何か新しい映画見たかな」という話になった。さて困った。何百本と見ただろうに、とっさに思い浮かばないのだ。浮かぶのは大昔見た映画のタイトルばかり。う〜む。映画に力がなくなったのだろうか、それとも、当方の感受能力が劣化したのか、恐らくはその両方なのだろうが。
それでも今の十代二十代で、映画に心惹かれる人は、絶えず登場してくる。彼ら彼女たちは、いつ何処でどんな風にどんな映画に出会って、心奪われたのだろうか。聞いてみたいような、怖いような‥。
人は誰でも時代とともに生きる。天知茂さんじゃないけれど「生まれたときが悪いのか、それとも俺が悪いのか」とは言いたくない。それぞれの時代に、それぞれの映画がある。そこに通底するもの、変わりながらも流れ続けるもの、それが映画なのだ。