2ペンスの希望

映画言論活動中です

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

対談本 余滴

沢木耕太郎セッションズ〈訊いて、聴く〉巻末に書下ろしエッセー:「あう」ということ が載っている。 会う。 逢う。 遇う。 遭う。 「それがどのような「あう」でも、人と人との関わりはその「あう」ことからしか始まらない。大事なことは「あう」というこ…

対談本 連続3 

沢木耕太郎(1947年 生)『沢木耕太郎セッションズ〈訊いて, 聴く〉1 達人、かく語りき』【2020年3月 岩波書店 刊】には十人との対話・セッションが載っている。吉本隆明、吉行淳之介、西部邁など物故者も多い。中に、淀川長治(1909~1998年)との「私の・…

対談本 連続2

中山信一郎(1936~2018年)『 泣き笑い 映画とジャズの極道日記』【2020年4月 ワイズ出版 刊】 冒頭に山田宏一(1938年 生)との対談「映画的記憶・ジャズ的記憶」【1983年1月】が再録されている。 成瀬巳喜男を巡って、 中山「高校一年の時だと思いますが…

対談本 連続

映画とジャズをめぐる対談本を立て続けに読んだ。 一冊目は、瀬川昌久(1924年 生)と蓮實重彦(1936年 生)の『アメリカから遠く離れて』【2020年11月 河出書房新社 刊】二人は学習院の先輩後輩だそうだ。 どなたのアイディア・趣味なのか知らないが「学習…

複雑回帰を! 複雑快気を ‼

複雑回帰 ‥ 誤字じゃない。 単純明快・簡単明瞭なお子様仕様のお手軽お気楽映画ばかりが幅を利かせるんじゃなしに、たまには、しっかり練りこまれて歯ごたえのある映画に出会いたい、そんな願望が抑えられない。 映画は、芳醇、法楽、馥郁、愉悦、情緒纏綿、…

個立無縁は孤立無援

個で立つことは悪いことじゃない。とらわれず、縛られず。自由に気ままに自主自立、独立自尊。一国一城の主。お山の大将。別に否定するわけじゃないが、たこつぼ ぼっち ひとり相撲 砂場の一人遊び 誰とも縁を結ばないままなら、情けない。内弁慶ではつまら…

家内制手工業

撮影所時代の映画製作は、工場制手工業(マニュファクチャー)だった。様々な専門部門のスタッフによる「分業」と「協業」の「手作り」一品生産。 ポスト撮影所時代に入って、大手会社はより一層のマーケティング重視・テンプレ仕立ての「工場制機械工業」にな…

誰そ彼 ⇒ 彼は誰

どの世界も似たようなものかもしれないが‥映画の世界「進化したのは科学技術だけ」「作り易くなって、作り難くなった」というのが、当ブログの基本認識だ。 生憎と映画史を語るほどの見識は持ち合わせていないので、思い付きと当てずっぽうでザックリと括る…

相手の靴を‥

「ボールを落とすな」というより、「ボールから目を離すな」と指示するコーチの方がずっと優秀なことは誰にでもわかる。 「相手の立場になって考えろ」と諭されるより「(一度)相手の靴を履いてみたら」と云われたほうがよくわかる。具体的、実践的、生々しく…

祝 『2ペンスの希望 』 DVDリリース

当ブログのタイトル『2ペンスの希望』のいわれについては、8年前に書いた。( 名前の由来 - 2ペンスの希望 初めて見たのは、半世紀以上前 大阪ミナミの映画館 ニキビ面の高校生時代のことだ。よもや自宅の本棚に映画が収まる時代が来るなんて夢にも思わな…

疑似カラー YouTube

知らなかった。久しぶりにYouTubeを覘いてみたら、「星の王子さま」という御仁が1930年代のモノクロ映画を沢山【疑似カラー&疑似ステレオ】でアップしておられるのに出くわした。1935年成瀬巳喜男『二人妻 ~妻よ薔薇のやうに』1936年溝口健二『浪華悲歌』1…

才能の溜まり場 社交の浮上を

ソーシャル・ディスタンシングが求められるご時世に逆らうようで申し訳ないが、溜まり場・社交の浮上を願う。 そこに行けば、いつも誰かしらがたむろし、何がしかが交換・交歓・交感される社交場。行きつけ馴染みの店、サロン、アジト、根城、拠点、巣窟、梁…

「悪名は無名に勝る」ヤな渡世だなぁ

何時の頃からか、政治や芸能の世界では「悪名は無名に勝る」という風潮がまかり通ってる。悪いこと、恥ずかしいこと、何でもいいから、目立ったもの勝ち、話題になればOK、節操も何もあったもんじゃないってか。きっと、八尾の朝吉親分は草葉の陰で怒ってる…

atg

知らなかった、atgのロゴマークのデザインが伊丹十三だったことを。 それがどーした、と云われればその通りだが、いや なに イイ仕事しているな、と感心したからだ。半世紀以上気にも留めず愛着してきた。当時発行されていた冊子のタイトル文字・表紙のデザ…

秋山道男

今日は備忘録(って、今日も‥か) 何十年か振りに懐かしい名前に出会った。秋山道男。1960年代末から70年前半にかけて、若松プロの映画に沢山でていた。秋山未知汚、秋山未痴汚、 秋山ミチヲ、いろんな名前で‥。小水一男が「ガイラ」で、秋山は「オバケ」。…

石ころのままで

『そして映画館はつづく あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう 』【2020年11月 フィルムアート社刊】からもう一つ。 樋口泰人さん(1957年生)がPFF2020の審査員をした時のことを書いている。 「作品としてのまとまりがなかったり伝えたいことをう…

映画のミライ

映画も映画館も観客も、すべては変わる。そんなことは当たり前だ、分かってる。映画のミライは、いまここにあるミライから始まる。けど、そのことがどれだけ理解されているか、覚束ないのがツライ。映画のミライは、いつだって志を持った人と場所から生まれ…

音楽のように

メモその三。「音楽のように」 映画は、これから音楽の世界のよう享受・受容・消費される、そんな予感がする。 「今の時代の映画ファンには、自分が好きな作品だけを何回も繰り返し劇場で見る人が増えています。かつて映画ファンといえば、いろんな映画を年…

垣根がなくなった

メモその二。「垣根がなくなった」 フィルムでの製作・上映がデジタル化で変わったことで、ミニシアターとシネコンの垣根がなくなりつつあるという指摘があった。トランスフォーマーという映画配給会社の加藤慎一郎さん(1977年生)の発言⇒「以前の地方館で…

世代交代 必至

映画にまつわる本はごまんとある。若い頃からたくさん読んできた。最近の一冊。『そして映画館はつづく あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう 』【2020年11月 フィルムアート社刊】新型コロナウイルスの混乱を機に出た緊急出版、時流便乗のキワモノ…

田井さん:啖呵

久し振りに小気味いいプロの啖呵に出会った。大分の映画館主・田井肇さん。新型コロナウイルス流行のさなかに立ち上がった「ミニシアター・エイド基金」に一言。 「支援くださった方々のコメントを読んでいると、映画館は本当に大変でしょうとか、シネマ5(…

受け身で怠惰だなんて‥嘘だ

映画は、映画館のシートにどっぷり身を沈めて、ひたすら受け身で身をゆだねるだけ。映画は、受け身で怠惰な安楽椅子、レベルの低い代物だ、そう考える人はもういないだろうが、以前は「趣味 読書」というとどこか高尚高級で、「趣味 映画」というとお手軽気…

暗闇+集団

映画はVHS、DVDのパッケージを経て、配信の時代に入ったと云われる。確かに。わざわざ映画館に足を運ばなくとも、等の昔から録画した映画を大画面それなりの大画面・の音響で見られる。オーダーすれば自宅にパッケージが届くし、クリックすれば山のようにラ…

徒歩圏に九館

思えば、子供の頃には歩いて行けるところに九軒の映画館があった。大阪南部の下町。邦画五社の系列館、活劇専門の洋画館、ラブストーリー・スリラー・ミュージカルごった煮の洋画二番館、何でもござれの選り取り見取り。二本立て三本立て四本立ても珍しくな…

独り占め

今朝がた、知人がSNSで知らせてきた。「歴史ある海外の国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した日本映画を観てきたのだが、観客は私一人。独占上映でした。コロナの影響もあろうが、寂しい」と。 いやいや、コロナ以前からミニシアターはそんなもの。観客一桁な…

二つのハードル

永く映画を見てきた古狸ゆえ新作の採点は辛(から)くなるばかりだ。昨今のハードルは二つ。「見たことがないものを見せてくれたか」「見えないけど確かにあるものを見せてくれたか」どちらか一つでもあれば御の字だが、歩留まりは悪くなるばかり。千に三つも…

「あ、」と思うか思わないか。

翻訳家・斎藤真理子さんの連載「翻訳詩アンソロジーの楽しみ」【『図書』2020年12月号】を読んだ。「若い頃「あ、」と思った詩編をどんどんノートに書き写していった。」というくだりがあった。続けて こうある。「「あ、」と思うか思わないか。これが大事で…

草野球になっちゃった

日本の映画は、いつの間にか草野球になっちゃった。草野球は自分たちがプレイするだけ。観客はいらない。ゼロでいい。もちろん居てくれたらそりゃあ嬉しいが‥。 プロ野球は、ファン・観客からお金を貰って暮らすスポーツ興行ビジネス。高校野球は腕や技(プ…

才能はお金のある世界に

若い才能はお金のある世界に集まる。それが世の習い、当然至極、健全なことだ。流行産業、花形仕事、‥‥お金が稼げてチヤホヤされる。 明治から昭和にかけてなら、さしずめ文学・作家あたり。もっとも高度成長期間後は廃れて、文字文学系は広告業界・コピーラ…

マージナル≒崖っぷち

昔々、映画は娯楽か芸術かという議論があった。そんな時はいつも どちらかに決めなくってもいいんじゃないのという違和感がぬぐえなかった。娯楽だから低級、芸術なら高級というのは皮相でオソマツ、粗雑の極み。どっちでもOK、どっちもありで好いじゃない。…