2ペンスの希望

映画言論活動中です

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

落合映画本

都心の本屋で落合博満さんの映画本『戦士の休息』を見た。 スタジオ・ジブリ発行の冊子「熱風」の連載記事をまとめたものだった。パラパラ読んでみた。好みはもちろん違うが、至極まっとうな映画ファンであることは良く伝わってきた。1953年秋田の生まれだ…

映画の食べ方

山田宏一さんの新刊本『映画 果てしなきベスト・テン』【2013年5月草思社刊】を読んだ。無類の映画好き(今様淀長さん!)ベストテンなどそもそも無理な話、噴飯モノであることを十分承知した上で、それでも語りたくて語りたくて堪らない映画の魅力、し…

照明

昔と変わったものは沢山ある。 キャメラのデジタル化もそのひつつだが、今日は照明の話。 仕事を始めた45年前には、フィルムの感度が低かったために、室内撮影には照明技術が欠かせなかった。大きな工場撮影には、百キロワット以上のライトを使う。大体十…

視覚と聴覚(菊地さん再録)

ここ暫く、菊地成孔さんの映画本『ユングのサウンドトラック』を賞玩している。 映画評論家として高名なH先生との対談【初出は「エスクァイア日本版」2008年2月号】で、音楽家らしい発言をしている。 「キャメラとマイクは今や同じ機材として完全に一体…

事情は同様?

事情はどの世界も同じようなものらしい。 昨日の続き。山田孝雄は同じ『私の語誌』第2巻の末尾で、国語辞典編纂の現状についてこう批判している。【265〜266頁 1996年9月三省堂刊】 「この国の辞書事情は、こんな調子では何時までも、退歩と停滞…

「私のこだわり」

「こだわり」は褒め言葉ではなく「どうでもいいような些細なことにこだわる・拘泥する」良くない言葉だ、よって、「こだわり」という言葉はそのようにしか使わない――― 二十年余りそう「こだわって」やってきた。しかし、それが大間違いだったことをつい最近…

イマドキ格言もどき

何年も前から2チャンネル辺りで新しい処世訓・格言・箴言のようなものも生まれている。そう若い人から教えてもらった。今日は、目に付いたものを幾つか挙げてみる。◎プラスはマイナスから書き始める ◎最大の敵は自分 最大の味方は自分 ◎不純な気持ちが10…

「ゆっくり負ける」

吉野万里子さんという方の『チームひとり』という小説を読んだ。 ジュブナイル=ヤングアダルト(発達心理学で言う所の成人期前期12〜19歳若い大人)向けのライト・ノベル。スポーツもの=小学生卓球選手の成長物語。ラスト近く、コーチが主人公の卓球少年…

新陳代謝

言葉は時代を映す鏡だとはよく言われる。 生まれ育った時代を背負って現われる。拙の場合‥‥イケメンよりハンサム、生足より素足、目線ではなく視線‥‥、つくづくオールド、正真正銘時代遅れの守旧派だ。 しかし、昔を知らなさ過ぎる、言葉遣いが間違っている…

和洋二本立て

かなり惨(むご)い二本立てを観た。 場所は神戸の映画館・イマドキ貴重な二本立て二番館。(名画座と呼ぶべきかもしれないが、ここはエールも込めて二番館と言っておきたい) 二本立ての場合、大半は洋画なら洋画で二本、邦画なら邦画のみで編成される。 し…

『横尾忠則全装幀集』

横尾忠則全装幀集という本が届いた。(全550ページ、総重量1650グラム)55年あまりのあいだに彼が手掛けた本の装幀900点を網羅した本だ。惹句にはこうあった。「装幀という名の自伝」。すべてに当人のコメントが付されている。 写真は1970年…

映画『旅する映写機』

東京の知人が、『旅する映写機』という映画を作っている。 やっと完成し、ただ今公開準備中とのことだ。 公式ウエブ・サイトがある。そこで予告編を上映中だ。 時間のあるときにでも、是非覗いてみて欲しい。 http://www.eishaki.com/index.do?cmd=display

『日活館』

年来『居眠り通信』というメールマガジンを愛読してきた。編集発行人は、斯界の大先輩にして今も現役のテレビマンMさん。すぐ隣の駅に住まいながら永らくのご無沙汰だが、今日はご当人の許諾を得てそのメルマガ最新号を転載させて戴く。 日本全国何処にでも…

好き嫌い

映画の好き嫌いが激しい方だ。 スリラーは好きだが、オカルトは嫌い。幽霊モノはOKだが心霊モノはNG、ネイチャー映画は苦手、動物モノも駄目、アニメも殆ど見ない。こうして挙げていくとかなり偏食なのがバレる。改めて胃袋の小ささに驚く。しかし、この…

マイナス・アーカイヴ

昨日の菊地成孔さんの挑発に乗ってみる。 確かに、百年以上の歴史を重ねてくると、映画にも古典・名作アーカイブが形成される。誰もが観ていて当たり前、基礎教養としての必修アイテム。しかし、そんなこと誰が決めた。そんなの関係ない、と言う若者もまた登…

菊地さん

JAZZ関係者あたりから、ときにとてつもなく刺激的な映画批評の矢が飛んでくることがある。全盛期の山下洋輔さんしかり、ゼロ年代の菊地成孔さんしかり。 そんな予感とともに『ユングのサウンドトラック』(副題:菊地成孔の映画と映画音楽の本)【2010…

拍手雲泥

映画館で監督や出演者を招いて舞台挨拶やトークショーを行うのが当たり前のようになって久しい。そんな映画館では、上映後拍手が起こることが多い。映画に感心して起こるのなら慶賀の至りだが、映画関係者が居ることを意識しての拍手、映画の出来不出来とは…

ホームシアター

ホームシアターの充実が進んでいるようだ。 大型量販店のAVコーナーに行くと、小型高性能のプロジェクター、スクリーン、サラウンドスピーカーシステム、遮光暗幕までラインナップが揃っている。数十年前、オーディオルームというのが流行ったことがあった…

芸の有無

学者・研究者先生は本当にスゴイ。皮肉ではなくそう思う。 映画について、「意味に収まりきらない過剰な何か」という十五文字を語りきるために、何年もかけて文献をあさり、二百五十頁を超える学術書を出版する。そのエネルギーには感心する。しかし、用語の…

少年漫画

少年漫画については永らくご無沙汰だった。先日久方ぶりに手に取って驚いた。 進歩なのか退歩なのかは正直よく分からんが、昔に比べて感情や意識の表現がどんどん細かく深くなっている。そう感じた。ディテールへのこだわり、トリビアルへの言及がハンパない…

意気地なし

言葉がどんどん軽くなっている。フワフワ、スカスカ、サクサク。すぐ揮発して残らない。消化が良い、といえばその通りなのだが、ロートルには腹持ちが悪くて仕方が無い。 事情は映画の世界も同じ。 含意も無ければ、他意も無い。悪意も無いのだろう。もちろ…

私家版

北海道に暮らすいとこ夫婦から本が送られてきた。 金婚式を記念した限定五十部手造私家版の歌集『女房日記』。夫は道産子・近代詩が専門、妻は関西人・中古女房文学の研究、ともに国文学者。添え書きにこうあった。 「道民五十周年を経て、傘寿を。そんな半…

市民メディアの本

東京の先輩が本を送ってくれた。 小山帥人(こやまおさひと)さんという方が書かれた『市民がメディアになるとき』【2013年6月書肆クラルテ発行朱鷺書房発売】小山さんはNHKOBで現在は自由ジャーナリストクラブ世話人。残念ながら面識は無かった。…

アニメと実写

木皿泉さんの本を読んでいたら、こんなくだりがあった【2013年4月KAWADE夢ムック別冊文藝「木皿泉」】(木皿さんは神戸在住の脚本家ユニット=二人組だ。ラジオドラマから出発してテレビドラマを手掛け、最近は小説も書く。) 依頼されて初めてアニ…

The よりも a

映画監督にThe という定冠詞は似合わない。 これぞ映画これこそ映画というただひとつの峰・サミットを競い合うのは愚の骨頂・大間違いである。ヒエラルキー・上下争いとは無縁に、天空に無数の星座が煌き瞬くように、綺羅、星のごとき存在、それが映画監督で…

大津さん

大津幸四郎さんというキャメラマンが居る。知る人ぞ知るドキュメンタリーキャメラマンだ。小川紳介の三里塚シリーズ、土本典昭の水俣シリーズでキャメラを廻してきた79歳、今も現役だ。 彼のインタビュー記事がすこぶる面白かった。メルマガ「ドキュメンタ…

ドカ(エ)2

昨日に続いて、キャメラマン=アンリ・ドカ(エ)その2。

ドカ(エ)

この頃になると、監督さんもそうだが、カメラマンの名前が気になりだした。 ラウール・クタールとアンリ・ドカ(当時はアンリ・ドカエといってた)が双璧だった。 YouTube で「アンリ・ドカの魔法1〜4」というのを見つけた。 Blu−ray発売にからんだ…