2ペンスの希望

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拍手雲泥

映画館で監督や出演者を招いて舞台挨拶やトークショーを行うのが当たり前のようになって久しい。そんな映画館では、上映後拍手が起こることが多い。映画に感心して起こるのなら慶賀の至りだが、映画関係者が居ることを意識しての拍手、映画の出来不出来とは関係ないねぎらいの拍手もある。それならまだマシ、お愛想おざなりの拍手、儀礼だけの拍手もある。居心地悪くてお尻がこそばゆくなってくる。
ごくマレにだが、映画が終わってクレジットタイトルが流れ始めた時、期せずして闇の中スクリーンに向かって拍手が起きることがある。最初はおずおずと、やがて同調者が続き、最後には少なからぬ人々が手を叩いている、そんな場面に出くわすと良かったなぁという気分になる。同じ拍手でも雲泥の差だ。
映画そのものへの拍手、出来上がった映画だけでなく、上映してくれた劇場、今この時この映画を観ている自分、この世に映画というものを生んでくれた先人たちへの感謝と賞賛までもが入り混じったふくよかな拍手のように思えてくる。
この「妙味」を味わってしまったら、映画を作ること、映画を見せることを辞めるわけにはいかなくなる。 きっと。