2ペンスの希望

映画言論活動中です

2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

闇三題

古文書その一に書いた「闇」に彷徨(さまよ)っている。 よって今日は、闇の話題 三つ。最初は、「闇歩きガイド」中野純さんのこと。 トワイライトハイク、ミッドナイトハイクなど夜の山や街を歩くナイトハイカーの草分け。知ったのは、十数年前。著書に『闇を…

古文書その三「向う側には作品だけ」

昨日に続いて、古文書その三。 「ぼくは、作家とは、作品の向う側にいるもの、すなわち作家というものをある抽象的な非在の場所を獲得しているひとりの絶対者として考えてきたのだが、それはぼくの誤解にすぎないのであって、作家もまたこちら側の世界に、す…

古文書その二「吸収と反射」

昨日に続いて、古文書つづき。 「三島由紀夫の《青空》は、いうならば「吸収する構造としての映像」=超越的なる「神」に吸い上げられる映像であり、バタイユの《青空》は、「反射する構造としての映像」=「哄笑」によって神を引き摺り下ろす映像だ。その差…

古文書その一「闇と青空」

四十年前に書いた「古文書」が発掘された。旧悪が暴露されたようできまりが悪い。 十代から二十代のはじめにかけてシネクラブ運動に参加していた。その頃の会報誌。 おそるおそる読んでみた。眼も当てられないほど酷くはなかった。(ん?いつまでたっても自…

音楽への接近

今日も「映画は音楽に近づいている」という話。 かつて映画を作るのは専門家・プロの仕事だとされてきた。それが変わってきた。 誰もが作れるようになって来た。(上手下手、出来の良し悪しについてはとりあえず不問に付す。どの世界にだって粗悪品、もどき…

「律」

四つ目は、「律」。 旋律であり、韻律。 映画にいちばん近い表現は音楽だ。そう思っている。 演劇でも文学でもない。リニアで前に進み、身を委ねるしかない。線的不可逆性と受動的拘束性(こなれの悪い表現で恐縮だが、何が言いたいのかは、おぼろげにでも伝…

「編」

映画第三の力は、「編」。 編とは、編集のこと。 つまり、つなぎであり、構成である。モンタージュであり、運動である。 あまたある断片を自在に組み上げて、命を吹き込む作業である。 命を吹き込むとはこうだ。⇒スジに骨組みを与え、骨格だけでなく、ちゃんと…

「像」

キイワードその二は、「像」。 像とは、見えないものを見せる力だ。記号とは違う。 眼の前に結ぶのではない。像は、表層を超え奥行き深くに浮かび上がるものだ。 イメージとは見るものではなく、思い浮かべるもの。 Seeすることは思惟すること。 底知れぬ深さ…

「枠」

美は文体に宿る。そう思っている。文体、映画を映画たらしめている映画の文体として、とりあえず、「枠」「像」「編」「律」四つのキイワードを挙げてみる。 まず第一は「枠」について。 「枠」とは、フレーム・構図。世界をどう切り取って見せるか、だ。 そ…

やむをえず必然的に

映画の基礎理論を!なぞと大それたことを意気込んでみたが、出航そうそう難儀している。柄にもない身の程知らずと反省もしている。かの吉本隆明『言語にとって美とはなにか』第Ⅰ巻 第Ⅱ章の冒頭にはこんな記述がある。【昭和四〇年五月刊 勁草書房版】 「わた…

四つの力

指示表出と自己表出という言葉で知られる『言語にとって美とはなにか』のひそみにならって、「映画にとって美とはなにか」と問うてみる。何を今更青臭く面映いかぎりだが。 映画でなければ描けないものの映画による表現、そこから生まれる官能をこそ「映画」と…

気の遠くなるような厄介な仕事

500回を越えてからいささか動きが鈍くなった。減速気味だ。 書きたい思いは書きつくした感と、書いても書いても書き足りない不全感の狭間に居る。ペースを落としながらも、ラジカルに書き続けたいという思いが深い。 Yさんの労作『言語にとって美とはなに…

古い文章 三つ

またまたサボった。 大昔に書かれた文章ばかり読んでいて、それがそれぞれに身に応えるので、新しい意欲が湧かないでいる。困ったものだ。 といって、ジタバタしたって始まらないので、 気に入った・気になったもの数点でご機嫌伺い、お茶を濁す。 「彼(パ…

もじり

雨ニモマケズ 風ニモマケズ 腰ハ低イガ志ハ高ク、腕ハ確カ 言葉はソフトだが、批評はハード。 人ヲ買イカブラズ、見クビリモセズ 恐縮スルホド礼儀正シク、呆レルホドノ無茶モスル 骨ハアルモノノ イイ加減デ面白半分 サウイフモノニ ワタシハナリタイ 宮沢…

惹句

『関根忠郎の映画惹句術』【徳間書店2012年8月刊】。 映画の本、それも現場を生きてきた人の本には面白いものが多い。これもその一冊。(それに引き較べては申し訳ないが、学者先生・研究者の映画本はゴツゴツ生煮えで消化に悪いのが多いように思う。錯…

『開店休業』

久しぶりに、気持ちの良い本を読んだ。 吉本隆明+ハルノ宵子(吉本多子)の『開店休業』【プレジデント社2013年4月刊】。2007年1月から2011年2月まで40回 雑誌「dancyu」に連載された“食”を巡る軽い物語だ。誰にでもある食と味の話が…