指示表出と自己表出という言葉で知られる『言語にとって美とはなにか』のひそみにならって、「映画にとって美とはなにか」と問うてみる。何を今更青臭く面映いかぎりだが。
映画でなければ描けないものの映画による表現、そこから生まれる官能をこそ「映画」と呼ぶ。呼びたい。題材や主題、メッセージやストーリーよりも先に生まれ、最後まで舌に残る「食感」とでもいおうか。
『言語にとって美とはなにか』第Ⅲ章では「韻律・選択・転換・喩」と言う言葉を掲げ、
文学作品の美を構成する要素として、この四つを挙げている。映画に置き換えてみる。
韻律⇒リズム・テンポ・呎 つまりは「律」
選択⇒構図・枠・フレーム つまりは「枠」
転換⇒編集・モンタージュ・つなぎ つまりは「編」
喩 ⇒ふくみ・ふくらみ・含意 つまりは「像」
やくたいもない悪あがきみたいだが‥船出してみる。