2ペンスの希望

映画言論活動中です

2018-01-01から1年間の記事一覧

あるもので作る

映画はあるもので作る。ないものでは作れない。 才能も技能も、お金も時間も。限られ、それぞれに台所事情がからむ。 小津安二郎にこんな発言がある。 「カット毎にあっちこっちからライトを運ぶので、二、三カットやるうちに床の上は電気のコードだらけにな…

『JuBAL』

管理人御贔屓の濱口竜介さんがこんな文章を書いている。 大学に入ってから、それまで見てきた映画のジャンルががらっと変わって、ハリウッド映画といった「面白い」映画だけでなく、ヌーベルヴァーグ、ニュージャーマンシネマ、アメリカン・インディペンデン…

間接の思想性

今日も備忘録。 「漫画における思想性は、その漫画の中に織りこまれる思想そのものによるよりも、むしろ、自由な思想の行使にとって不可欠なしなやかさを保つための、思想の屈伸体操を提供することにある。それぞれの漫画作家は、独自のツボをこころえたあん…

いいぞ 明香

『女優芹明香伝説』【ワイズ出版2018年5月 刊】を読んだ。 中でご自身も書いているように芝居は下手だ。正直 演技は拙い。 けど、忘られず得難い「映画女優」のひとりである。(舞台では、芝居や演技ができない役者は役立たずだが、映画では、存在感だけで、…

理不尽な‥

吉川浩満さんの『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』【朝日出版社 2014年10月 刊】を読んだ。 「本書は専門書や学術書ではない。広く一般の読書人に向けた(少し長めの)エッセイである」と前書きで述べている通り、四百頁を超えるがサクサク読める。 たまに…

渾沌から開闢へ

昭和の映画はとうに終わり、平成の映画ももうすぐ終わる。 私が生き愛してきた映画は昭和の映画だ。 フィルムの映画、スタッフワーク・分業の映画。 時代とともに映画も変わる。 平成の映画は、デジタル・メモリーチップの映画、セル生産方式(自己完結型 マ…

敬して遠ざけ日が暮れる

「映画監督・柳澤壽男の世界」という副題を持つ本『そっちやない こっちや』【浦辻宏昌+岡田秀則 編著 新宿書房 2018年6月30日 刊】を読んで色んなことを考えた。 残念ながら一本も観ていない。 福祉啓発映画(福祉ドキュメンタリー)という枠組みへの先入観…

「名誉を引き受けること」

故ナンシー関が好きだった。その加減か、弟子筋の小田嶋隆さんの「日経ビジネスオンライン」の連載コラム「 小田嶋隆の『ア・ピース・オブ・警句 』 〜世間に転がる意味不明」を愛読している。2018年8月31日の記事から。 或る人が、或る席で(さして上手くも…

「眼も鼻もない時代をこえて‥是から」

ブログは、日記兼備忘録。それ以上でもそれ以下でもない。 と云うわけで、今日も日記兼備忘録。 昨日、久しぶりに封切り初日に映画館に出掛けた。大阪梅田の地下映画館。週末初日の三回目の上映、96席のほぼ六割が埋まっていた。まずまずなのかイマイチな…

『ハッピーアワー』論

濱口竜介さんの映画については何度か書いてきた。菊地成孔さんの評論「シネフィルである事がまたOKになりつつある」なども読んできた。(ご興味の向きは ⇒ https://realsound.jp/movie/2016/01/post-711.html) この夏、2015年劇場公開映画『ハッピーアワー』…

雲と泥

またぞろ 発作的な更新でゴメン。 人の映画をとやかく言うのはいい加減 止めたら‥とさんざん各位に諫められてるのに、「アンタ三十年間何を積んできたの」と言いたくなる日本映画を観た。 思い付きと思いこみだけでは、悲しい、哀しい。或る人の映評で半世紀…

久方振りに

久方振りに、新しい映画に出会ったので、備忘録的に書く。 春本雄二郎監督の映画『かぞくへ』 春本監督ググってみたら、1978年神戸生まれ。日芸の監督専攻を出たあと 松竹京撮でテレビの仕事を重ね、フリーとなって今は東京で活動中らしい。 『かぞくへ…