2ペンスの希望

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2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

イルイル 帽子3

引き続き、千野帽子さんのシリーズ その3。(‥‥ってどこまで引っ張るの、といまにも野次が飛んできそうだが) 第一章 句会があるから俳句を作る の中で、「句会に向かない人」を挙げている。 遠慮して黙りこんでしまう人、無難に褒めて切り抜けようとする人…

モノボケ 帽子2

昨日に続いて千野帽子さんの『俳句いきなり入門』。 型破りな(という意味は、従来の凡百ナマヌルな入門書とはまるっきし異なる、という意味の)俳句入門書だが、昨今の映画のありようをも類推させてなかなか示唆的。刺激的で面白い。オススメだ。 第二章2に…

適性

すこぶる痛快な入門書を読んだ。 千野帽子さんの『俳句いきなり入門』【NHK出版新書383 2012年7月刊】 いきなりの始まりはこうだ。 あなたの「俳句適性」をチェック! ①俳句は、自分の言いたいこと(メッセージ)や感動を自分の言葉で表現するものだ。‥‥以下…

大杉栄

大杉栄といえば知られたアナキストだが、なかなか達者な人物だったようだ。 というのは、KAWADE道の手帖というムック『大杉栄』【河出書房新社2012年2月刊】を読んだからだ。土曜社という出版社を立ち上げた豊田剛さんのエッセイ「大杉栄のずるい本屋」。そ…

商業映画

商業映画という言葉もとんと聞かなくなった。もはや映画は、商業として成立しなくなっている、ということなのかもしれない。最近はどんな映画もおしなべて「作品(!)」と呼ばれているようだ。役者さんの記者会見や舞台挨拶などでも、「この作品に参加できて‥(…

駅舎投影

東京駅でこんな見世物が開かれた。朝日新聞に拠れば、1万人を超える観客が殺到して初日は予定を中断したとのことだ。YouTubeに画像が上がっている。 ロンドン五輪の開会式でも使われていた「3Dプロジェクションマッピング」という映像技術だそうだ。なかな…

ユカ

企画/水の江滝子 原作/安川実(ミッキー安川) 脚本/倉本聡 斉藤耕一 撮影/山崎善弘 音楽/黛敏郎 監督/中平康 主演/加賀まりこ 1964日活映画『月曜日のユカ』タイトルが開けたら♪聖者の行進が始まるのも、この上なく不吉でお洒落だ。

道代

関根恵子より断然 安田道代だった。ラベルが違う、というか、レベルが違う、というか。 もちろん今でも高橋惠子より大楠道代派だ。ただ、二人ともに今活かされているとは言いがたいのが寂しい。ということで、今日は久しぶりの予告編。『痴人の愛』も考えた…

一筆書き

「一筆書き」みたいな映画しか生まれなくなっている(ような気がする)。思い付きのワンアイディア。お手軽仕立ての促成栽培。見てくれは鮮やかだが、いかにも小ぶり・小粒。腹持ちも悪く、食べた気がしない。味も香りもしゃしゃりもない。歯ざわりも歯応えも…

二桁落ち

映画の製作費は、二桁は落ちている。億円が千万円、そして百万円台に‥。自主制作映画のことじゃない、お商売としての映画の話だ。撮影カメラ(機材費)と記録メディア(材料費)の技術革新・コストダウンの結果だ。そこだけ見れば、慶賀の至りみたいだ。しかし…

観客とは誰か

ジャン・ルイ・シェフェールの『映画を見に行く普通の男』の原著裏表紙にシェフェール自身による「自書解説」にこんな一節がある、と訳者の丹生谷貴志さんが紹介している。 【Jean Luis Schefer L’homme ordinaire du cinema Chaiers du Cinema/Gallimard 1980…

製造中止

数日前、富士フィルムが映画用フィルムの製造を中止するというニュースが流れた。 撮影用の16mm35mmネガフィルム、プリント用の16mm35mmポジフィルムともに段階的に製造を終了し、今後はアーカイブ用フィルムの製造のみとするようだ。アーカイブ用フ…

こんな詩を読んだ。誰が書いたのかはつまびらかではない。線を引くな 線を引くな/お前と俺の間に 線を引くな/強い奴と弱い奴の間に 線を引くな/役に立つ奴と役に立たない奴 の間に 線を引くな/不幸をもたらす奴と幸せを運んでくる奴の間に 線を引くな/…

21世紀

映画を見始めた頃は、映画館しかなかった。パソコンもDVDもビデオもなかった。映画は映画館に出かけていって見るものだった。それが大きく変わったのはご承知の通りだ。「映画館」と「ホームシアター」の違いについては、ずっと考え続けてきた。(昨今スマホ…

この三十年

親しい友人と会うと、何か新しい映画見た?というのが挨拶がわりになっている。 それぞれが最近観た映画を披露する。新作もあれば回顧上映の旧作もある。 映画館至上主義じゃないのでDVDも混じる。そして今や懐かしのVHSも‥。あるとき、改まって「この三十年…

マホガニー・モーニング

1979 山口百恵 マホガニー・モーニング 作詞・阿木燿子/作曲・芳野藤丸 いつの日にか挿入歌に使ってみたい一曲。

夜へ

1979 山口百恵 夜へ 作詞・阿木燿子/作曲・宇崎龍童 その昔 日活映画の挿入歌に使われて光っていたなぁ。

三つで五百円

1975年発売 西条ロック「三つで五百円」 作詞は山田孝雄、作曲はむつひろし「昭和枯れすすき」コンビだ。陰隠滅滅、底の底。 こちらをきくと「昭和枯れすすき」が明るく聞こえてくる。かなり中毒性の強い楽曲ゆえ、ご注意願いたい。 ピンボケ気味のジャ…

「観客」論

作ってはいけない映画はないけれど、 見せてはいけない映画はあるような気がしている。 作ったからには一人でも多くの人々に見てもらいたいという思いは分からないでもない。しかし、見せる側でセイブすべきではないか。観客からお金を取って見せるには忍び…

「さようならD」再論

創刊された雑誌neoneoの特集「さようならドキュメンタリー」特集について再論する。 殆どの論者が、「現実」「事実」「実在」「一回性」「関係性」「時間の封じ込め」といった辺りを行ったり来たりする中、畠山容平さんの「始める時に、終わりが見えていないもの」と春…

四十年

知人がこんな記事を紹介してくれた。熊本県山都町は九州山地阿蘇山の外輪山に 位置する山里らしい。【熊本日日新聞2012年8月21日記事】 四十年は短くない。その持続には敬意を払う。これは新聞記事の任ではなかろうが、お金の問題、台所事情、懐具合…

さようならD

“ドキュメンタリー”はいま、かつてなく面白い とのキャッチフレーズを掲げて創刊されたドキュメンタリーカルチャーの越境空間『neoneo』という雑誌を読んだ【2012年9月1日Vol.1発行】創刊特集は「さようならドキュメンタリー」と刺激的かつ問題提起的…

針文字

学校をでて、映画の仕事を始めた頃の先輩が制作プロデュースした映画が完成した。大逆事件を管野須賀子に焦点を当てて描いた記録映画『100年の谺(こだま)ー大逆事件は生きている』(90分)だ。拙はまだ観ていない。 大逆事件と菅野については、通り一…

億劫

自慢じゃないが(と書くときは、必ず幾ばくかの自慢が潜む、と小田嶋隆さんも書いているが‥)生まれてこの方一度も外国に行ったことがない。映像関係の仕事をしている中では珍しい少数派だ。そうでなくとも昨今、希少種だろう。お座敷が掛からなかった、とい…

作為3

以前にも一度書いたと記憶するが、「手乗り冨士」というのをご存知だろうか? 富士山を遠望するロケーションで、手前に手のひらを差し出して写真を撮ると、ちょうど遠景の富士山が手のひらの上に乗っかっているかのように見えるという極々初歩的なトリック撮…

作為2

映画が作為のかたまりであることは、100年以上前からハッキリしていた。 トリック撮影の祖ジョルジュ・メリエスの短編二本。 ドキッとしたりハッとしたり、それがない映画は退屈だ。芸がなさ過ぎる。

作為

当たり前のことだが、映像はカメラがあって、レンズがあって、サイズや絞りフォーカス被写界深度が選ばれて成立する。どんなに自然を装っても、映画は作為のかたまりだ。そのことに今一度自覚的になっておきたい。というのは、あまりにも簡単にカメラを向け…

誰一人

作りたいから作るの対極、作れそうだから作る、お座敷が掛かったから、お呼びがあったから作る という映画がある。誰もがそれぞれの思惑で、部分的に参加する、部分的に責任をもつ。結果、だれも全面的な責任を負わない(問われない)映画が出来上がる。公然…