2ペンスの希望

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二桁落ち

映画の製作費は、二桁は落ちている。億円が千万円、そして百万円台に‥。自主制作映画のことじゃない、お商売としての映画の話だ。撮影カメラ(機材費)と記録メディア(材料費)の技術革新・コストダウンの結果だ。そこだけ見れば、慶賀の至りみたいだ。しかし事はそう簡単ではない。良し悪しだ。跛行的な機材の進化で、現場は照明や録音の技術者が払底していると聞く。誰もが監督やキャメラマンを目指して、どちらかといえば裏方的な「照明」「録音」には若い人が集まらないとも聞く。移動車やクレーンなどの特機を扱う技師も少なくなっているようだ。雨ふらしや、火薬を扱う名人は、慢性的な後継者不足が続く。日陰が痩せれば、日なたも枯れる。貧相・お粗末なものになる。
暴論かもしれないが‥(こう書くときは、あながち暴論とはいえないんだゾーという主張が篭っていることが多い、と心得られたし)お金がすべてではなかろうが、製作費が百分の一になった分、百倍注力しなければ、昔の(高かった時代の)映画に釣り合わないという勘定になる。努力も才能も百分の一にシュリンクしてしまったのでは敵わない。
映画制作のデフレスパイラル
つまりは「百分の一でも映画が作れるようになった」ということではなかろう。実情は「百分の一でしか映画が作れなくなった」ということなのだ。
技術の進化が、技能をスポイルしている。
置いてけぼりを食って、今頃、泡を食ったって、いただけない。