2ペンスの希望

映画言論活動中です

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

答え合わせ は いかがなものか(アニメ映画と実写映画)

久しぶりにふや町映画タウンのおーもり店主さんと四方山話をした。 アニメ映画と実写映画、何がどう違うのだろうという話。 おーもり店主:アニメって一から百まで全部作り手がコントロールして作れる。観客は、その意図をどこまで正確に読み取り理解できて…

埒外へ

公開前から評判の高かったドキュメンタリー映画を二本見てきた。 当ブログは個々の映画を論じる映画評が主目的ではないので、題名は控える。 一本は「部落問題」もう一本は「教科書検定問題」を扱う。「面白い」映画というわけではなかったけれど、ともに「…

清水哲男さん 追記

清水さんの思い出は尽きない。詩人・FMラジオパーソナリティだけじゃない。物書きとして多彩な(雑多な)しごとも重ねてきた。半世紀50年 目にする限り付き合ってきた。 そして、1971年の映画『空, 見たか?』を忘れるわけにはいかない。監督の田辺泰志さん…

清水哲男さん 追悼

知らなかった! 詩人の清水哲男さんが亡くなっていた。2022年3月7日 84歳。不覚。紙の新聞を購読しなくなって久しいからとか、現代詩の動向に見切りをつけていたからとか、言い訳してもむなしい。痛恨の極み。 詩集が出れば欠かさず読んできた最愛詩人なのに…

西部劇 三本立

このところ西部劇ばかり観ている。昔のアメリカ映画。立て続けに何本も。先住民との確執、悪党たちとのバトル、勧善懲悪アクション映画とは限らない。「西部劇」≒「歴史劇」なのだから、拳銃を撃ち合う派手なドンパチ活劇だけじゃない。家族もの、親子もの、…

So what? と Because it’s wonderfull.

映画を観ていると、So what?「だから何? 」「それがどうした」と思うことがある。 「それはあなたの問題でしょ。」「そっちで勝手にやってくれ」と言いたくなる。 一方で、 なんてことない映画なのに、Because it’s wonderfull. 「だって、面白いんだもん…

『f/22 No.3』山上徹二郎「役割としてのP」

作り手によるドキュメンタリー批評雑誌『f/22』第三号シグロの山上徹二郎プロデューサーのインタビュー記事からもう一つ。【2021.7.15. F/22製作委員会 発行 】 インタビュアーのQuestion「映画プロデューサーとはどんな仕事なのでしょうか?」に対する山上…

『f/22 No.3』山上徹二郎「カネの話」

作り手が発信するドキュメンタリー批評雑誌『f/22』第三号を読んだ。【2021.7.15. F/22製作委員会 発行 創刊号は2019.2.1.、第二号は2019.11.1.】特集記事は「さあ、カネの話をしよう!」 あまり採り上げられることが少ないお金の話。ドキュメンタリー制作の…

PFF 大島渚賞 「映画という制度に対する問題提起」

2020年にPFF主催で始まった「大島渚賞」。審査委員長は坂本龍一、審査員は黒沢清とPFFの荒木啓子の計三人。「原則として前年に発表された作品があり、日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度)」を対象に「毎年、国内外の日本映画に造詣の深い映画祭ディ…

K点越え

「分かる人にはわかる」とか「届く人にしか届かない」という人がいる。高峰秀子も言っている。「わかる人は言わなくてもわかる。言わなきゃいけない人は、言ってもわからない」【斎藤明美『高峰秀子の言葉』2014年1月 新潮社 刊】 どこにでも通もいれば野暮…

あらかじめの献立と予算

四十歳の高峰秀子が「映画という戦場で出会った戦友」市川崑の記録映画『東京オリンピック』を擁護して、東京新聞に投稿したことはよく知られている。「わたしはアタマにきた」【1965年3月18日 東京新聞夕刊】(知らない人はググってみて。2020TOKYOじゃない…

「素人にかえる」技術

五歳から映画の仕事に就いた高峰秀子は、演技や俳優についても幾つか綴っている。 「三十年俳優をやって得た結論は、「素人にかえる」ということです。どんなにうまくても、作為の見える演技は嫌いなのです。自然には、新しいも古いもありません。結局〝演技…

競争して程度を下げている

松下幸之助:このごろ、映画でも本でもマンガが流行(はや)っていますでしょう? なんでも、あまりむつかしいことは好まれませんなァ。 高峰秀子:ええ、他愛なくゲタゲタッと笑うようなものばかり受けますね。寝床にはいるころには、もう忘れてしまうような…

おちるところまで‥

「映画界の現状をいえば、おちるところまでおちた、ということでしょうね。」「でね、立ち直るためには‥映画人全体、企業家、俳優、批評家にも注文したいけど、どっちつかずの中途半端なものを考え方をやめて、徹底的にまじめな作品、徹底的に芸術的な作品、…

脚本家と監督:熟慮断行

今はどうだか知らないが、かつて映画の世界では脚本家のことは「ほんや」と呼んでいた。映画の骨格をつくる最重要パートだが、自称・他称に‥少量 自嘲も込めて。 いくぶん、監督より知名度は落ちる。低く見られてきたようにも感じる。確かに、書かれた「文字…

岩井克人:映画好きの経済学者

同じくインタビュー本『自由の限界 世界の知性21人が問う国家と民主主義 』には経済学者岩井克人さんのこんな言葉も載っていた。 「映画好きです。良い作品は解かなければならない問題を解く。学問と同じです。小津安二郎は倫理的に生きるとは何かを問い、映…

ジジェク:映画好きの哲学者

ちょっとした成り行きで、読売新聞編集委員 鶴原徹也のインタビュー本『自由の限界 世界の知性21人が問う国家と民主主義 』【2021.1.10 中公新書ラクレ】を読んだ。本筋とは全く関係なしだが、映画好きで知られるスロベニアの精神分析学・哲学者 スラヴォイ…