2ペンスの希望

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2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ジャズ喫茶=映画館=博物館 ?!

オーストリア人の日本研究者エクハート・デルシュミットが書いた「戦後におけるジャズ喫茶の変貌を取り上げた論文」を読んだ。 (Eckhart Derschmidt,The Disappearance of the ‘Jazu-Kissa’ State University of New York Press,1998 )【註:末尾参照】1950年…

「共有」⇔「私有」

視覚芸術の歴史について、森村泰昌という現代美術の作家がこんなことを書いていた。ズット以前に読んだので、うろ覚えなのだが、こんな趣旨のことだったと記憶している。出典不祥のまま勝手に引用する。(ご存知の方は 乞う御教示) 油絵の具を使ってカンバス…

職位(新人が神様になるまで)

新潟に「博進堂」さんという印刷会社がある。二十年以上前に仕事を通じて知った。この会社の職位制がとてもよく出来ていた。感心して書き抜き、たまに取り出しては眺めている。 新人=就業を認められる。実地以前の基礎研修。 見習=現場に出て、部分的に実地…

パラパラ漫画

お笑い芸人・鉄拳の『振り子』という短編アニメ(3分5秒)がYouTubeで話題だというので観た。原始的なパラパラ漫画方式のアニメだった。ストーリーについてはなんてことはなかったが、時計の振り子をフレームに生かした表現の工夫には必然性が込められてい…

紅しょうが

USTREAMで「デジタルのミライ」というシンポジウムを観ていた。その中で、大手興行会社からの出席者が、「日本の年間映画興行収入1800億円は、紅しょうがの市場規模より小さい」という話をしていた。以前当ブログで、百貨店売上と比較したことがあるが、刺…

保証なし 権利なし

大阪の環状線を利用している人はご存知だろうが、新今宮駅のプラットホームから、「保証なし 権利なし」という大看板が見える。見るたびにドキリとさせられるが、日払いアパート(昔で云えば木賃宿・ドヤのこと)の入居募集広告だ。つまり保証人も権利金も何も…

道楽と極道

映画道楽と映画極道では、イメージがかなり違う。映画極道に比べたら映画道楽なんて、可愛いもんだ。極道。元々は仏教用語とのことだが、いつやらからか「淫して身持ちを悪くするまで止まないこと」「素行の悪いもの・悪事をはたらくもの」を意味するように…

作る奴は見ない 見る奴は‥

仕事に没頭していた頃は 映画館にも行かず(行けずではない)、映画も殆ど観なかった。時間が無かったというのもあるが、そんなことより、作ることに夢中で、そっちの方が面白かったというのが正直なところだ。もうひとつ、タマに映画を観ると、色んな意味で腹…

ブツとしての映画

映画とは何か? スクリーンに投影されたり、モニター画面に映し出されたソフトこそが映画だという観点に立てば、厳密には、フィルム=映画でもDVD、ビデオ=映画でもない。 メディアは何であれ、ソフトとはそういうものなのだろう。しかし何だかしっくり…

選択科目 それも端っこの

映画はもはや必修科目ではない。 たかだか選択科目、それも端っこの方にかろうじて引っかってるだけである。 昔は、教養や知識といった以上の意味を持っていた。生活の中で見るのが当たり前だった。テレビもビデオも無かった時代、外国の生活や文化、歴史を…

高校野球とプロ野球

春のセンバツが始まる。昨年に続いて今年のセンバツは、震災おし、感動・美談おし のようだが‥、プロ野球の方はといえば、はや開幕前から醜い場外乱闘が始まっている。いやはや。 同じ野球とはいえ、高校野球とプロ野球ではプレイヤーもファンも違う。楽しみ…

ミシマ社

今日も本の話。 三島邦弘さんという人の書いた『計画と無計画のあいだ 「自由が丘のほがらか出版社」の話』(2011年10月河出書房新社 刊) 「倒産百二十二社、創業十一社」と言われる出版業界の構造不況が続く中、三島さんは新しい出版社を立ち上げた。その…

映画の「お客様」

必要があって、本棚から古い本を引っ張りだしてきた。 橋本治さんの『橋本治雑文集成パンセⅣ 映画たちよ!』(1990年4月 河出書房新社刊) こんなくだりが目に付いた。 「俺は映画評論家じゃないし、映画関係者じゃないし、映画監督になりたい人でもないもん。…

Yさん

Yさんが死んだ。 Yさんなどと書かずに、吉本隆明さんと書こう。 生前一度だけ私的に言葉を交わしたことがある。場所は西伊豆・土肥の海水浴場。先方は毎夏家族で避暑に出掛ける御馴染みのところ、当方は、社員旅行の最中だった。砂浜の俄か作りの舞台で、…

真正「映画人」

昨日に続いて 文学関連の話を‥ひとくさり。 小説や詩、文学界では、十代二十代で何がしかの受賞を果たし、デビューする作家が少なくない。若くして世に出た作家が不安と不安定さゆえに、期待と人気に押しつぶされて早々に潰れていく(潰されていく)例も無き…

亀田製菓さん 失礼!御免

文学の世界では、 純文学、中間小説、大衆小説や、ジュニア小説、児童文学などのジャンル分けがある。(今でも有効なのだろうか)それぞれにマーケットも読者も異なる。もっとも昨今は純文学はサッパリ、中間小説も大衆小説も昔のようには売れなくなったと聞…

notes 7 単純原則を

《ご近所大長征》note−その七は、「単純原則を」今日は、日本の映画「嘆き節」、少々覚悟してお付き合いを!先立つものがないと弱気になるものだ。 周りを見渡してみても、お先真っ暗。残り時間も多くはなさそう。 そこで、乱暴だが単純な条件・原則を設…

893

映画も観るが、本も読む。タレント業も器用にこなす日本映画の監督さんが2010年に『ガキ以上、愚連隊未満』という本を出している。つい最近 知った。未読。ガキ 愚連隊、ヤクザ、‥最近余り目にしなくなった言葉だ。そういえば昔は映画をやりたいなんていうと…

彼岸と此岸

今日は、1969年に作られた日本映画の一本。 分野を超え、時代を超えて、ひとつに集まろうとする力‥‥詩人、音楽家、グラフィックデザイナー、日本画家、などなど。 彼岸と此岸、あちらとこちらを結びつける力‥‥好き嫌いはあるだろうが、日本映画にあった…

合掌

今日3月12日は、友人の映画監督の命日だ。野村惠一という。 生涯かけて、自前で五本の劇映画を作って逝った。 「企業の映画・資本が作る映画でも、作家の映画でもなく、僕はみんなの映画を作る」というのが口癖だった。中身スカスカのハリボテ大作映画で…

遊び!

今日は「遊び」の話。ハンドルに「遊び」がないととても運転しにくい、適度に「遊び」がなければ建具は開けたて出来ない、と云われる。ハンドルに遊びがないとちょっとした動きでも曲がってしまうし、路面に応じてハンドルがいつも震えて運転しにくいという…

仕事!

若い頃、色んなスタッフと仕事をしてきた。その時よく聴いた言葉。「いい仕事をしたいね」。確かにその通りなのだが、言いようのない違和を感じていた。 「いい仕事」ってどんな仕事?誰にとって「いい仕事」なの?。若気の至りもあったのだろうが、「いい仕事…

緩くなって‥

フィルムは高かった。仕事を始めてから十五年はフィルムだった。35mm、16mm。生フィルム、現像代、ラッシュ・フィルム(編集用に焼く補正なしの棒焼きポジ)まで含めると、100ft(35mmなら1分強 16mmなら3分余り)で数万円もした。 だか…

映画の味方

「映画館の上映形式が、時代の変化について行けず、映画の観客が激減しはじめた。しかし、テレビを通じて映画をうけとる人々が激増してきて、テレビで育った若い人々が、映画館へくるようになり、あの暗い沈黙の闇のなかに沈んで、ひとり映画をたのしむ魅力…

総重量860kg→約910g

思うところあって、昔の日本映画についての本を読み返している。 鈴木晰也さんの『ラッパと呼ばれた男』(1990年8月キネマ旬報社刊)。 鈴木さんは元大映京都撮影所長、長く仕えた名物社長プロデューサー永田雅一について書いた本だ。以前読んだ時には気にも…

撮影所

ないものねだりは愚の骨頂だが、撮影所が無くなって失ったものは思っている以上に大きい‥この頃とみにそう思うようになった。「作りやすくなったが、食えなくなった」とは何度か書いてきた。その結果、飯の種は何か別のことで賄(まかな)いながら、映画に打ち…

遅れてるゥ〜

半世紀以上の歴史を持つ映画雑誌(キネ旬じゃないよ)の最新号の目次を眺めていて驚いた。座談会のタイトルに「映画は商品か作品か、その狭間で現実を描きだす」とあった。誰が名付けたのか責任者がハッキリしないのでいい加減なことをいってはいけないが、…

知人の映画紹介。

今日は知人の映画の紹介を。 生臭い主張が前面に出たドキュメンタリー映画が多い中、プロの技倆、見せ方の工夫が施された一例として。(ご注意:下の動画予告編「末尾の上映予定3月〜は2011年3月〜のこと」全国上映は一応終了)「めげない あきらめない 立…

監督って‥

今「監督」といえば、スポーツの監督さんか工事現場の監督を思い浮かべる人の方が多いのではないだろうか。映画監督のことを考える人がどれくらいいるだろう‥‥なんてことを思いながら、映画の雑誌を読んでいたら、現役バリバリの映画監督が座談会でこんな発…

古典(スタンダード)

どんな世界にも、基本となる《背骨の技術》と、時代を超えて古びない《古典》(スタンダードナンバー)があると思う。何らかの形で人間と社会(人の世)の真実を伝えている表現物は、時代を超えて愛され続ける。とりわけ文学や音楽の世界ではそうだ(った筈だ…