2ペンスの希望

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2024-01-01から1年間の記事一覧

九楊:正論不徳?

いささか訳ありで、石川九楊さんの本を立て続けに読んでいる。膨大な著作は四半世紀前からとびとびに読んできたが、今回は五冊。『石川九楊の行書入門 石川メソッドで30日基本完全マスター』【2010.11 芸術新聞社】『石川九楊のほんとうに書がわかる九つの法…

雑なるもの:再考(最高?)

常々 映画は猥雑なもの、夾雑物が混ざり発酵・発熱が起こる厄介もの・取り扱い注意物件だと思ってきた。ということで、雑なるもの:再考(最高?)。 テキストは、先回に続きロラン・バルト『明るい部屋 写真についての覚書』 彼は〈写真〉について「ステゥデ…

雑なるものと純なるもの

何を今さらと言われそうだが、言葉は詰まるところ〈記号〉だ。それもかなり純度の高い。較べて、映像(画像)は、もっと雑。写真も映画も雑なるものが混入した表現物だ。そこで こんな図式を描いてみた。 【雑】の意義には、「いろいろなものが入りまじってい…

「雑草」対決

友人に教えられて『テレビマン伊丹十三の冒険』【2023.6.26. 東京大学出版会】を読んだ。永くタッグを組んでいたテレビマンユニオンの今野勉が書いた本だ。副題に「テレビは映画より面白い?」とある。 伊丹十三という「人物の考察本」であると同時に、今野…

「昭和」人として生きる

ずっと昭和で生きていく。発作的にそう決めた。かつて杉浦日向子や橋本治が江戸人として生きたように。 んっ、何故かって? だってそうじゃない。貧しかったけれど豊かだった時代。慎ましかったけど、贅沢だった時代。暮らしも映画もすべてが痩せて貧相にな…

映画のお手本:カタチであってナカミでもあるような映画

久しぶりに大阪九条の映画館に出掛けた。 清水宏監督『桃の花の咲く下で』(1951年/新東宝/74分/モノクロ) 満員御礼の大盛況 慶賀の至りだ。( 但し 平均年齢70歳超とおぼしき老人ホーム状態だったが‥) スコブル良かった。カタチであってナカミでもあるよう…

広くなって狭くなった 再考

一年半ほど前に「広くなって狭くなった」という稿を書いたことがある。 kobe-yama.hatenablog.com その時の論調は、悲観的・後ろ向きだった。時代や状況が変わったわけではないが、も少し、楽観的・前向きに考えてみる。ということで今回は「広くなって狭く…

本 三冊

しばらく間が空いた。雑事にかまけてブログの更新が疎かになってしまった。 それでも何度か映画館にも出かけたし、本も読んできた。31年ぶりのスペインの巨匠の長編新作や2000年に作られたハンガリーの監督の4Kレストア版、5分のYouTubeから生まれたベストセ…

Akino Kondoh 

遅まきながら、だいぶ前 若い人に教えて貰った近藤聡乃のことを思い出した。 うち、アニメを二本。 《電車かもしれない》2001-2002年 4分19秒 www.youtube.com 《てんとう虫のおとむらい》2005-2006年 5分39秒 www.youtube.com 不思議少女は、永遠・最強のア…

備忘録 連打:『ハレンチ君主 いんびな休日』

今回も備忘録。しぶとく生き残りつづけているピンク映画業界の隅っこのお話し。 荒木太郎監督の『ハレンチ君主 いんびな休日』をめぐる裁判の顛末。 「公開中止」を巡る監督と製作会社のやりとりに狡猾な週刊誌が乗り出して‥‥ これ以上は書かない。ご興味の…

備忘録 二題

今日は、映画の周縁からの備忘録 二つ。 ①1956年 京都生まれのAV監督ラッシャーみよしさんの本『AV監督ヒヤヒヤ日記』【2023.2.26. ワック株式会社 刊】 「はじめに」の一節 ⇒「考えてみれば、私は四〇年もこの世界(アダルト業界)にいます。その間に業界の…

道楽:道を楽しむ ただそれだけのこと

道楽:道を楽しむ ただそれだけのこと。 地べたの日常生活の中で、喰うこととは別の楽しみ・余計なこととしてイソイソワクワク取り組むすべてのことは道楽だ。もとをたどれば音楽だって絵画だって皆そうだろう。やれ芸術だとかアートだとか崇め奉ったり、持…

映画の沼にハマろうと思っている若い衆に

スコブル面白い映画本に出会った。 関本郁夫『映画監督放浪記』伊藤彰彦・塚田泉 編【2023.6.30. 小学館スクウェア 刊】 評論家や研究者センセの本より現場を知る映画人の書いた本のほうが数段面白くってタメになるというのは当管理人の持論だ。ただし、昔は…

胸アツ「映画人」本

『映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日』【2023.11.30 文藝春秋 刊】は胸アツ本だった。 1939年(昭和14年) 祖父・樋口勇さんがつくった映画館を継いだ三代目館主樋口智巳さんが火災で焼失した映画館を復活させるまでの紆余曲折を編…

『よもだ俳人 子規の艶』

夏井いつきと奥田瑛二の共著『よもだ俳人 子規の艶』【2023.9.30. 朝日新書924 朝日新聞出版】を読んだ。拾い物だった。 「よもだ」というのは伊予の言葉で「へそ曲がり」というか、「わざと滑稽な言動をする」というか、そんなニュアンスだ。と夏井さんは書…

『映像インタビュー術』と『‥フムフム‥』

『人の心を動かす!映像インタビュー術』という本を読んでみた。【2023.11.27.玄光社】 6人のビデオグラファーと3人のドキュメンタリー映画監督が登場する。(不勉強でゴメン。ビデオグラファーという言葉 初めて知った。写真家=カメラマン=フォトグラフ…

弥猛た?いえいえ 京都のドンだった

遅まきながら、ユリイカの『追悼・中島貞夫』特集【2023.10.1. 青土社】を読んだ。 表紙に血の赤が鮮やかだ。 表紙に記載はないが、お世話になった知人が何人も文章を寄せている。懐かしい。 「俺、弥猛た、だから」:或るインタビューでのご本人の答え。(…

「ドラマはあるけどチックがねえなあ」

「このドラマにはドラマはあるけどチックがねえなあ」誰の言葉かって? マキノ光雄。彼がある脚本を読みながら言った言葉だそうだ。光雄は、御大マキノ省三の六男坊・華やかなりし頃の東映京都撮影所のドンである。 「? なんのこっちゃー さっぱりわからん…