2ペンスの希望

映画言論活動中です

映画の沼にハマろうと思っている若い衆に

スコブル面白い映画本に出会った。

関本郁夫『映画監督放浪記』伊藤彰彦・塚田泉 編【2023.6.30. 小学館スクウェア 刊】

評論家や研究者センセの本より現場を知る映画人の書いた本のほうが数段面白くってタメになるというのは当管理人の持論だ。ただし、昔はよかった凄かったの懐古/回顧型自慢話本も混じるので注意が要る。古臭くカビの生えた昔話/おとぎ話にしかならない役立たずは敬遠してもよろしい。

この本は違う。

日の当たる表街道/大通りではなく、据えた臭いが漂う裏路地/けもの道を走り抜けてきた一人の映画人の自叙伝。元は1980年に出た『映画人カツドウヤ 烈伝』山下誠・河崎宏 編【1980.12.青心社 刊】

好評で初版5000部はたちまち完売、2002年には同じく青心社から「改訂版」が出たそうだ。【2002.5.青心社 刊】

高卒で東映京都撮影所に美術助手=大工見習いとして入社、退潮期の撮影所を生き、松竹・日活・東宝・角川と、〝渡り監督〟として映画とテレビを往還してきた映画人生指南本。

これ一冊読めば足りる。どこかの大学や専門学校で教わるよりはるかに実践/実利の教則本/教科書である。これから映画の現場で生きよう/映画の沼にハマってみようと夢見ている若い衆は騙されたと思って手に取ってみればいい。なあに買うことはない。近くの公立図書館に結構 蔵書している筈だ。

もっとも、撮影所のことなんてかけらも知らない、映画がメインと添え物の二本立て興行だったことなんて想像もできない、そういった御仁には、不向きかもしれない。

けど、映画という表現物が他と違って共同制作/集団創作を旨とし、企画から制作/製作、興行/流通、配信/販売までチームプレイ/何人もの人の手を経る代物であるかぎり、きっと役に立つ 示唆/姿勢/教訓/智恵 が読み取れるにちがいない。

この本、管理人もお世話になった方々が少なからず登場する。いささかながら関本監督に遅れて東映京撮周辺をうろちょろしたことのある身としては、末尾ながら、お名前を列記しておく。深尾道典監督、中村務脚本家、奈村協プロデューサー、石原昭美術課長、上田正直進行主任、中島貞夫監督、‥‥京一会館‥‥菅原伸郎朝日新聞映画担当記者‥