2ペンスの希望

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2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「紙で手を切る]

「楽しくて優しくて面白い絵本なんですけど、ページのとこ めっちゃ鋭くて手ぇ切れそう」 テレ朝系列深夜枠放送のTV番組『お笑い実力刃』でピン芸人・佐久間一行の芸を評して、後輩ピース又吉が語っていたコメントだ。 凶器でも何でもない紙の縁に秘められた…

「浅薄な名画」

ポーリン・ケイル女史の本『RASING KANE スキャンダルの祝祭 ウェルズ、マンキーウィッツ、ハースト 誰が『市民ケーン』をつくったか?』から、「文芸技」をもう一つ。 「偉大な作品というものは、なぜ、どこが偉大なのかを説明するのは難しいし、特に映画は…

歴史は繰り返す?

2021年米アカデミー賞のことを書いたら、1941年の米アカデミー賞のことを思い出した。 あの(かの?)映画『市民ケーン』にまつわるお話。 1941年 ニューヨーク映画批評家協会賞はわけなく獲得したのだが、米アカデミー賞では九部門にノミネートされながら、…

下世話な話

昔はそれなりに気にした時期も無かったわけではないが、映画祭や賞レースへの関心はとうの昔に失せた。永らく「眉に唾する党」「裏事情懐疑派」「下衆の勘繰り族」でやってきた。それでも、今年は久しぶりにちょっぴり心がざわついている。欧州で評価の高い…

春樹メール(映画『ドライブ・マイ・カー』を巡って)

村上春樹はどこかで「SNSみたいなものは何一つやらないので‥」と書いていた。自作原作映画についてはあまりコメントしないと思っていたら、クーリエジャポンで、こんな記事を見つけた。 【「映像化に向かない」ハルキ作品をめぐる映画化への挑戦 米紙が絶…

ホントのトコロ

映画の配収宣伝を業とする知人に教えられて、烏丸せつこの主演映画インタビュー記事を読んだ。 インタビューした石飛徳樹(!)記者に 「あんた、こういう映画が好きなの?全然分かってないね。こんなにツッコミどころ満載の映画はないよ。そもそも美智子(映画…

いい加減を 誠実に

『侯孝賢の映画講義』【卓伯棠 編 秋山珠子 訳 2021.11.17. みすず書房 刊】は誠実な本だった。後進に向けて自らの映画人生・映画作法を率直に語っている。 構えず、飾らず、隠さない。すっぴん、自然体。ことばで言うのは簡単だが、けっして容易なことじゃ…

「行うは易く、知るは難し」

映画とは、語るものではなく、言葉では説明できないものです。映画とは基本的に撮るべきものなのです。撮って、撮って、撮っていくうちに、いつの間にか撮れるようになる、そして撮れば撮るほど映画は良くなっていく、見るということも同じことです。映画を…

「学」がある こと

「学」があることは悪いことではない。従って、映画学を否定するわけではない。映画芸術学、映画社会学、映画史学、映画理論、表象文化論、視覚表現研究、作家・作品研究、脚本研究、記録映像研究、表現技術研究、制作技術研究、‥‥、‥‥、限りなくカリキュラ…

リバイバル礼賛

ハリウッドの昔のヒット作の再公開が盛んみたいだ。 マトリックス、トップガン、ゴーストバスターズ‥‥。知名度頼り。リアルタイムで見ているフfファンは懐かしみ、名前は知っているが見たことにない若い世代にもアピールできる。新作を一からお金と手間暇か…

〈世界観〉より〈お手並み拝見〉

近年映画はますます題材や素材の新規さが重視される傾向にある。「作品の持つ世界観」たら「設定のユニークさ」なんてのがやたら持てはやされる。実話かどうかも。けど、映画という作り物の真価は、どう見せるか、見せ方の巧拙・語り口のうまさが勝負のポイ…

映画を見ることは‥‥

伊藤本『仕事と人生に効く教養としての映画』はこんなフレーズから始まる。 映画を見ることは難しい。これが本書のスタート地点です。 以下、古典的名作映画から最近のヒット作・ディズニーアニメなど硬軟取り混ぜてまな板に載せ、微に入り細をうがってバッ…

『仕事と人生に効く教養としての映画』

伊藤弘了さんの本『仕事と人生に効く教養としての映画』【2021.7.28 PHP研究所 刊】を読んでいる。 三宅香帆さんの「名作小説を面白く読む」ナビ本と同じく、「映画の見方を指南してその世界に引きずり込む教則・教唆本だ。この著者さん、どうやら御専門は小…

三宅香帆さんを下敷きに(十四) 正しい読解なんて存在しない

元日は、三宅嬢本を下敷きにした映画観客指南 最終回。 結局みんな、小説を通して、自分の物語を読んでいる。 必ずただしい読解なんて存在しない(まちがった読解はあると思うけど。)」 そこにあるのは、自分にとっていちばん面白い読解、だけだ。 その通~…