2ペンスの希望

映画言論活動中です

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

四方田犬彦『映画史への招待』

少し前、新しい「世界映画史を」と書いたのを読んで若い知人から「四方田犬彦さんの『映画史への招待』は読みましたか」とメールを頂戴した。不勉強で読んでいなかったので早速近くの図書館にリクエストして読み始めた。1998年4月岩波書店刊。 当時明治…

撮影と編集

監督には二種類ある。撮影の現場が好きな監督さんと編集作業が好きな監督さん。 撮影現場はムカデ競争の際たるものだ。スタッフ・キャスト皆の呼吸・息がぴったり合わなければ撮影は前に進まない。昔のように撮影所の中に手間暇かけたセットを組んで思い通り…

ムカデ競走

最近は二人三脚程度の軽装備競技化しているきらいもあるが、 映画は基本“ムカデ競走”である。 翻ってテレビの番組づくりは、400mバトンリレー。個人プレーの積み重ね。管理人の経験ではそうだ。 編成枠に則って、リサーチャー構成作家放送作家が企画を練…

大河 複々線 卍巴 キメラ

映画は多面体、どこまでも雑なるもののコンプレックスである。 商品と作品、娯楽と芸術の同居、伝統的な型・話法の練り上げとそこからの逸脱=型破りへの期待、その背理と混淆の果てしないせめぎ合い。 線:リニアではなく、面:スクエアとしての映画史を考…

面としての映画史

時間の経過・推移を踏まえた記述ということになると、どうしても線的な歴史になることは、或る程度はやむを得ないことなのだろう。リニアの映画史。日本史、世界史の別があるように、日本映画史、世界映画史、それぞれの地域・国に則した発展・進化、栄枯盛…

映画史更新

「観る手段や方法」がこれだけ多様化しているのに、この数十年新しい「映画史」は登場していない。畏れ多いのか、手に余るのか、商売にならないのか、誰も手を出さない。 もっとも、この数十年新しい映画が登場していない、歴史に記すべき映画は見当たらない…

ボンクラ魂

杉作J太郎さんの『ボンクラ映画魂 完全版 燃える男優(オトコ)列伝』【徳間書店2016年2月 刊 底本は1996年洋泉社『ボンクラ魂 三角マークの男優(オトコ)たち』】を 読んでいる。 後書きにこうあった。 「ボンクラ魂というのは、はらわたの底に燃える炎であ…

ビミョー

内藤篤さんの『円山町瀬戸際日誌 名画座シネマヴェーラ渋谷の10年』を読み終えた。ゆっくり読んだのは、かならずしも感心したからではない。後半は明らかに失速気味、 テンションも落ちている。それでも、普段よくお世話になっている名画座運営の舞台裏・台…

マニア

マニアなんてものは、そもそもがバランスを欠いた存在だ。 どんなマニアも健全だがビョーキ、常に行き過ぎている、そう思ってきた。懲りない一面と一途な学習能力を併せ持つ人々の群れ。精進一徹。(一徹精進?どっちだっていい。どうせ今思いついただけの、…

一山当てる

それにしても、どうして皆「赤字にならなければめっけもの」「とんとんなら御の字」などとつましく謙虚なのだろ。「コレで一山当てよう」という山師には久しくお目に掛からない。現実を見渡せばとても楽観も妄想も難しい、ということなのだろう。良く分かる…

自転車操業

映画の興行は通常三か月以上前にはプログラムが確定しているるのが常態だ。何十本かの映画をそれも日替わりで上映するという「特集」型の名画座は大変だ。一昨日からの内藤篤日記本の続き。 以下、一部要約も交えて‥ 「権利元が多数社に散らばる特集というの…

確信犯の産物

それにしても、死屍累々、討ち死につぐ討ち死に‥えっ何のことかって? 昨日に続く 内藤本『円山町瀬戸際日記』2006年編の話。 山口百恵特集。「女優・山口百恵1973−1980]主演作だけでなく出演作全18本一挙ラインナップ。続いて「鈴木清順 48本勝負」って、そ…

瀬戸際 袋小路 道楽的

円山町つながりというわけではないのだが、数日前から内藤篤さんの『円山町瀬戸際日誌』を読んでいる。【羽鳥書店2015年12月 刊】内藤さんは1958年生まれ、弁護士であり、同時に、名画座シネマヴェーラ渋谷の館主でもある「映画好き」。専門はエンターテイメ…

ネオン・ジャーナリズム

本橋信宏さんの本を何冊か読んだ。 『鶯谷 東京最後の異界』『渋谷円山町 迷宮の花街』【ともに宝島社 鶯谷は2013年12月 円山町は2015年2月 刊】 いずれも色街とか風俗、歓楽街といわれる土地に まつわるルポルタージュ本だ。中にこんな一節がある。(152〜1…

邦題今昔

久しぶりにフランス映画「突然炎のごとく」を観た。 ヌーヴェルヴェーグ映画ファンの間では、カッコをつけて「ジュールとジム」と原題で呼ぶ人も多い。一緒に観た人たちと、しばし映画の原題と邦題を巡る話題になった。 原題に関係ない勝手なタイトルをつけ…

「死んでも可(い)いわ」

英語の“I love you”をどう日本語に訳すかについては、先人たちが頭を絞ってきた。 大学時代に国文科の先輩から聞いた夏目漱石の逸話を今も憶えている。 漱石が英語教師をしていた頃の話。或る学生が”I love you”を真っ正直に「私はあなたを愛しています」と訳…

「死んでもいい」

「死んでもいい」というタイトルを聞いて、ロートルが一番に思い浮かべるのは、1962年米仏希合作の映画だ。 監督ジュールズ・ダッシン。出演は、メリナ・メルクーリ、アンソニー・パーキンス 、ラフ・ヴァローネ。 原題は Phaedra ギリシャ悲劇”フェ…

「黄昏のビギン」

今「黄昏のビギン」といえば、ちあきなおみだろうが、元々は、永六輔中村八大コンビの作詞作曲、水原弘歌1959年10月発売のシングル盤だ。管理人世代は皆 水原弘版で聴いて育った。その由来と軌跡を丁寧に辿った本を読んだ。佐藤剛さんの『黄昏のビギンの物語…

あと一歩がたとえ大きく遠くとも

ちょっと前、アバウト苦手、指示待ち社員のことを書いた。 昨日、27年勤めた読売新聞社を2015年6月 辞めて独立記者となった加藤隆則さんが、インタビューに応えているのを読んだ。 「若い連中なんかは「どういう記事を書いたらいいんですか」とお伺い…

「本当のことを云おうか」

詩を書く人はごまんといるが、詩だけでメシが喰える詩人は少ない。日本ではただ一人ではないかと思われる谷川俊太郎さんが大阪で受けたインタビュー記事を読んだ。 「詩というものは、基本的にあいまいで多義的なもの。教育の現場では、これは何を意味してい…

「みんなで映画のつくり方を学ぶために‥」

わたしは遊ぶ 君は遊ぶ わたしたちは遊ぶ 映画で遊ぶ遊びに規則があると 君は思っている なぜなら 君は これは遊びで 大人のためだけのものだということを まだ知らずにいる 子供だからだ 君はもう大人のひとりだ なぜなら君は これは子供たちの 遊びだとい…

3×3D

これも昨日の佐々木敦さんの本『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ 』で知ったのだが、日本では未公開の3D映画『3×3D』の予告編がYouTubeに上がっていた。 ジャン・リュック・ゴダールとピーター・グリーナウェイ、エドガー・ペラー、 3人…

『ゴダール原論』

世にゴダール好きは多い。 多分インテリ&インテリもどきを刺激する成分含有量が多いのだろう。恥ずかしながら かくいう管理人もその一人だ。 ということで、 2016年1月に出た佐々木敦さんの『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ 』【新潮社】を読…

アバウト苦手

「たのしい授業」という雑誌がある。 教育学者・板倉聖宣さんが提唱する「仮説実験授業」など科学教育を中心にした月刊誌だ。1983年創刊、最新2016年4月号で447号、小学校の教員を中心に読まれている。ちょっと前の号でこんなのを読んだ。最近の…

三度繰り返す

「伝えたいこと、強調したいことは三度繰り返せ。手を変え品を変え登場させることで、印象が強くなり、記憶される度合いは格段に伸びる。これは映画の鉄則の一つだよ。」 若い頃 先輩から口酸っぱく教えられてきた。くどい、しつこいと言われながら、この習…

たまには只ものじゃないものに

世の中には只のものがあふれている。マクドナルドはスマイル0円だ。 タダより高いものはないともいう。身銭を切らない知識は偽物、碌な物じゃない、とも。 いずれ真実だろう。 雑誌を定期購読しなくなって久しい。新聞もとうに止めた。それでも本屋に行く習…

引き返せなくなってしまう気が‥

さらに、映画『旅する映写機』の冊子の話。高知県 大心劇場の小松秀吉さんの言葉。「上映もデジタル化すれば簡単になると思うけど、何だか味気ない。田んぼでも農薬を使えば楽だけど、楽なほうへ行ったら引き返せなくなってしまう気がする。」 至言。 文化的…

三位一体

昨日の続き。映画『旅する映写機』のパンフレット冒頭に、プラネット映画資料図書館 神戸映画資料館安井喜雄館長さんの文章が載っていた。 「その昔「映画は三位一体だ」といった人があった。すなわち「観る」「創る」「映写する」の三つが揃って初めて「映…

映写機 愛

東京時代にお世話になった女性監督Mさんが、ご自身の映画『旅する映写機』のパンフレットを送って下さった。映画公開時に買いそびれていたので嬉しかった。 よくある映画のパンフレットは、冒頭に著名人・文化人の感想・コメントが麗々しく掲げられていたり…

「大事」より「面白い」

「本を売ってごはんをたべたい、という人たち。本にはまだまだ何かができると思っている人たち。本は大事なものだから、自分たちが犠牲になってでも売ろう、なんてことではなくて、どうすれば本を売ることで面白い仕事ができるか、を考える人がたくさんいま…