2ペンスの希望

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一山当てる

それにしても、どうして皆「赤字にならなければめっけもの」「とんとんなら御の字」などとつましく謙虚なのだろ。「コレで一山当てよう」という山師には久しくお目に掛からない。現実を見渡せばとても楽観も妄想も難しい、ということなのだろう。良く分かる。もはや、大ベストセラーで自社ビルを建てた出版社とか、思いがけない大化け映画で大儲けして羽振りの良いプロデューサーなんて昔話は夢のまた夢なのだろう。どこをみても景気の良い話はとんと聞かない。聞こえてこない。
文章を書いたり映画を作ったりというのは、吉本隆明流に言うなら、「25時間目」の仕事なのだから、そもそもがリターンは「余禄」それで十分なのかも。それが健全な社会ってもんかも知れない。
一山当てようなんて山師は身の程知らず、神をも恐れぬやましい所業ということになる。でもなぁ、ちまちまみみっちいのもなんだかなぁ〜、未練がましくそう思って来たら‥
不意に谷川雁の言葉が浮かんできた。 「男だって虹みたいに裂けたいのさ」(「破船」)
胡散臭くあろうとも、やましい山師をかたりたい。虹の山師への憧れは消えない。