2ペンスの希望

映画言論活動中です

Akino Kondoh 

遅まきながら、だいぶ前 若い人に教えて貰った近藤聡乃のことを思い出した。 うち、アニメを二本。 《電車かもしれない》2001-2002年 4分19秒 www.youtube.com 《てんとう虫のおとむらい》2005-2006年 5分39秒 www.youtube.com 不思議少女は、永遠・最強のア…

備忘録 連打:『ハレンチ君主 いんびな休日』

今回も備忘録。しぶとく生き残りつづけているピンク映画業界の隅っこのお話し。 荒木太郎監督の『ハレンチ君主 いんびな休日』をめぐる裁判の顛末。 「公開中止」を巡る監督と製作会社のやりとりに狡猾な週刊誌が乗り出して‥‥ これ以上は書かない。ご興味の…

備忘録 二題

今日は、映画の周縁からの備忘録 二つ。 ①1956年 京都生まれのAV監督ラッシャーみよしさんの本『AV監督ヒヤヒヤ日記』【2023.2.26. ワック株式会社 刊】 「はじめに」の一節 ⇒「考えてみれば、私は四〇年もこの世界(アダルト業界)にいます。その間に業界の…

道楽:道を楽しむ ただそれだけのこと

道楽:道を楽しむ ただそれだけのこと。 地べたの日常生活の中で、喰うこととは別の楽しみ・余計なこととしてイソイソワクワク取り組むすべてのことは道楽だ。もとをたどれば音楽だって絵画だって皆そうだろう。やれ芸術だとかアートだとか崇め奉ったり、持…

映画の沼にハマろうと思っている若い衆に

スコブル面白い映画本に出会った。 関本郁夫『映画監督放浪記』伊藤彰彦・塚田泉 編【2023.6.30. 小学館スクウェア 刊】 評論家や研究者センセの本より現場を知る映画人の書いた本のほうが数段面白くってタメになるというのは当管理人の持論だ。ただし、昔は…

胸アツ「映画人」本

『映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日』【2023.11.30 文藝春秋 刊】は胸アツ本だった。 1939年(昭和14年) 祖父・樋口勇さんがつくった映画館を継いだ三代目館主樋口智巳さんが火災で焼失した映画館を復活させるまでの紆余曲折を編…

『よもだ俳人 子規の艶』

夏井いつきと奥田瑛二の共著『よもだ俳人 子規の艶』【2023.9.30. 朝日新書924 朝日新聞出版】を読んだ。拾い物だった。 「よもだ」というのは伊予の言葉で「へそ曲がり」というか、「わざと滑稽な言動をする」というか、そんなニュアンスだ。と夏井さんは書…

『映像インタビュー術』と『‥フムフム‥』

『人の心を動かす!映像インタビュー術』という本を読んでみた。【2023.11.27.玄光社】 6人のビデオグラファーと3人のドキュメンタリー映画監督が登場する。(不勉強でゴメン。ビデオグラファーという言葉 初めて知った。写真家=カメラマン=フォトグラフ…

弥猛た?いえいえ 京都のドンだった

遅まきながら、ユリイカの『追悼・中島貞夫』特集【2023.10.1. 青土社】を読んだ。 表紙に血の赤が鮮やかだ。 表紙に記載はないが、お世話になった知人が何人も文章を寄せている。懐かしい。 「俺、弥猛た、だから」:或るインタビューでのご本人の答え。(…

「ドラマはあるけどチックがねえなあ」

「このドラマにはドラマはあるけどチックがねえなあ」誰の言葉かって? マキノ光雄。彼がある脚本を読みながら言った言葉だそうだ。光雄は、御大マキノ省三の六男坊・華やかなりし頃の東映京都撮影所のドンである。 「? なんのこっちゃー さっぱりわからん…

白鳥さんの本に寄せて④

本だけでなく、川内さんは大学時代の友人・三浦大輔さんと映画も作った。 2022年 / 16:9 / DCP / 107分 映画については未見でもあり これ以上は触れない。 代わりに、ライター川内さんの言葉を少々。 「普段ものを書くときのわたしは、インタビューの録音を…

白鳥さんの本に寄せて③

次の動画を見て、「白シャツグループは何回ボールパスをしたか数えて下さい」 www.youtube.com白鳥本には「この実験では、だいたい半数から三分の二のひとがゴリラには気づかなかったと答える」とあった。「パスの回数を数えることを指示されない場合は、た…

白鳥さんの本に寄せて②

美術館を出てからのやりとり。 Q:それって別々の「色」として識別してるんですか? 白鳥:ううん、概念として残るだけ 〇「色は概念的に理解している」 白鳥:一般的には「色」って視覚の話だと思われるんだけど、白とか茶とか青とか、色に名前があるという…

白鳥さんの本に寄せて①

刺激的な本と出合った。川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』【2020.9.8. 集英社インターナショナル 刊】目の見える川内さん(ノンフィクション作家)とその女友達マイティこと佐藤麻衣子さん(水戸美術館教育プログラムコーディネーター)が…

三本脚の椅子

鈴木敏夫の書。他にこんなのも‥ 尊敬していないはずはないのに。たぶん、「崇めたり、上位に置いたりしないよ」ということだろう。いつも対等、横並び。信頼しているし認めてるけど、上下関係は無し。だからこそ、いつも真剣勝負の緊張感。馴れ合いももたれ…

「現実」と 嘘

東京神楽坂で「コ本や」というブックショップ兼オープン・スペースを運営するアーティスト青柳菜摘さん(1990年生まれ)のこんな文章を読んだ。 「子どもの頃から、実写の映像はぜんぶ嘘に見えてイヤだった。だから、チャンネルをコロコロまわしてはアニメを手…

「私はもう旧いのだろうか」

少し前だが、大阪芸術大学の映像学科の前学科長大森一樹の『わが心の自叙伝』という本にこんなことが書いてあった。 「大阪芸術大学の映像学科長に就いて二十年近くになるが、ここ最近、映画はあまり見ないけど映画監督になりたいという若い人が少なからずい…

ネット 数珠つなぎ

小松宰(こまつおさむ 東北に住む映画評論家)さんの新著『新撰組映画はなぜ作られるのか』【2023年10月30日 彩流社刊】を面白く読んだ。 「あとがき」に「今回もまた、映画サークル「絵夢人倶楽部」の越前貞久氏から多くの資料提供を受けた。」とあった。気…

「難しいですね‥‥‥。できない。」

XX:日本にいちばん足りないのはプロデューサーだとわたしは思っています。 XY:注文する人ですね。 XX:XYさんがうまく表現しておられたように、「種を自分のなかで育てる人」です。プロデューサーって何って誰かに説明するときには、プロデューサーという…

空の神様

知人に「こんなの知ってるかい」と教えられた。 映画の背景画家・島倉二千六(ふちむ)さん。1940年生まれ。今井正、山本薩夫、亀井文夫などの独立プロ「新星映画社」の美術スタッフを経て東宝で特撮ものなどの背景美術を担当。スタッフは「雲屋さん」と呼び…

「つまりは技術である。」

備忘録。 映画作家・大林宣彦が映画監督・小津安二郎について書いた文章。 「小津映画を名作たらしめたものは、つまりは技術である。」 「小津さんの初期の映画の中に、会社で働くサラリーマンの姿を蜿蜒と横に移動していくショットがあり、ちょうどキャメラ…

左右対称 逆もまた真なり

ネットに、こんな記事があった。 「映画館で見ない理由と 自分が映画館でわざわざ見る理由と同じだった」という青年の主張。 ⇓ 「何もできない」のがいい。 似たようなのが あちこちに。集中力、拘束力、伝導率・高カロリー、拘禁状態がカ・イ・カ・ン。‥あ…

小津ごのみ:番外

中野翠『小津ごのみ』シリーズ、昨日で終わりのつもりだったが、余計な付け足し。 完璧なスタイリッシュを貫いた小津安二郎だが、この中野本には気になる記述が二つほどあった。 ◉俳優 飯田蝶子:1947『長屋紳士録』撮影中に飯田蝶子が軽い気持ちで言った一…

小津ごのみ:「わたくし 狡いんです」考

言うまでもない、1953年『東京物語』の極めつけ台詞。小津ファンにはつとに有名。 ネットには、深読みの考察が幾つも並ぶ。 あまた出版されてきた小津本にも様々な解釈が‥ぞろぞろ。 なかで高橋治『絢爛たる影絵』をはじめとする「性的深読み」について、中…

小津ごのみ:「おじさまごっこ」

女の人で小津映画がしんそこ好きという人は少ない。そもそも見ている人自体少ない。 ⇓ 「小津調映画」には、「結婚」「家庭」はあっても「恋愛」はない。つまりはメロ度の乏しい映画である。女の人たちに人気がない理由の第一はそこにあるんじゃないか。 ⇓ …

小津ごのみ:カタチでありナカミでもある‥

「形式(かたち)であり、内容(なかみ)でもあるようなもの」小津監督にとっての「表現」とはそのようなもの、だったと思う。中野翠さんはこう書いている。 中野翠が描いた「本文カット」から勝手に引用 「悪趣味なものは出てこない。だから生々しい迫力には欠…

小津ごのみ:一貫モダニスト

「女たちのきものと帯の柄は徹底的と言っていいくらいグラフィックデザイン的だ。絵画的ではなくデザイン的。作り手の個性などまったくない。無名の人々が歴史の中で作りあげて来た幾何学的な柄だ。たとえ花鳥風月が題材になっても、絵画的なタッチではなく…

小津ごのみ:ドンゴロス

生誕120年 歿後60年とあって今年も小津関連本が次々刊行されている。研究者・信者が世界中に生まれていることは当ブログでも何度か触れてきた。小津映画に込められた深淵(深遠)なる思想を微細・精緻に分析・解析した(と称した)「研究」が陸続と発表され…

ゾッキ本 いや めっけもん だった

ご近所の古本屋さん=口笛文庫の店先には いつも 税込み100円の格安本が並んでいる。いわゆるゾッキ本。ひと山いくらの処分品のたぐい。 先日 こんな一冊を発見。税込み百円。即買い。 中野翠 著『小津ごのみ』【2008年2月 筑摩書房 刊】 PR誌「ちくま」連載…

〝新しい〟映画を見た

久しぶりに地元で公開初日の映画を見てきた。船橋淳監督作『過去負う者』 チラシを三つ挙げる。多分 古いものから順 予告編は五つ。 www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com残念ながら、どの予告編も物足りない。…