古人の遺した金言は幾つもある。 牧野省三 牧野省三の「一スジ 二ヌケ 三ドウサ」については、何度も書いてきた。が飽きない。汲めども尽きせぬ泉。先の「新世代映画監督」本で内山拓也さんはこんな風に自身の覚悟を語る。 全部壊すために一所懸命準備する。…
荒木重光さん編集の本『恐るべき新世代映画監督たち』を読んだ。 2024.9.13. K&Bパブリッシャーズ 「恐るべき‥」とはこれまた大きく出たもんだ。恐らく ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』のもじりだろうが‥恐れ入る。 1992年から1999年生まれ 20代半ば…
覆面作家の舞城王太郎がこんなことを書いているのを読んだ。 「小説、マンガ、実写映画やドラマ、そしてアニメなど、物語にはいろんな表現の方法があって、それぞれに、それじゃないと踏み込めない領域や、見せられない情景や、獲得できないリズムや、飛び込…
大阪九条のミニシアターで、とても気持ちの良い映画を観た。『OKAは手ぶらでやってくる』 ヒトリNGOとして、カンボジアに子供たちの寺子屋を作り続けた男の記録映画だ。この手の主題・題材はともすれば、肩に力が入りすぎ、青筋立てたり声高だったり、映画と…
備忘録。新旧 硬軟 取り交ぜて映画関連本を 五冊ほど読んだ。 原田健一 2024.1.30. 学文社 柴田康太郎 2024.3.31. 春秋社 はらだたけひで 2018.4.20. 未知谷 廣瀬純 2024.9.18. 彩図社 コトブキ ツカサ(寿司)2024.9.1. 日本実業出版社 鶴見俊輔 1959.12.8. …
神戸映画資料館の貸館事業『TOKYO FAKE DOCUMENNTARY FESTIVAL IN KOBE』に出掛け、フェイクドキュメンタリー映画を観てきた。短編中編 計八本。 どれも面白かった。 どんな映画もすべては作り物、多かれ少なかれフェイクでドキュメンタルなものだ、そう思っ…
今回は、備忘録。まずはこの写真をご覧あれ。 右の椅子に腰かけた御仁は、ご存じJLG(ジャン=リュック・ゴダール 御大)キャメラの前は、撮影担当のファブリス・アラーニョ。2014年製作の3D映画『Adieu au Langage さらば言語よ (邦題 さらば、愛の言葉よ…
昨日の小出本を読んで、ふと思い出した。映画の世界にも、超重量級のレンガ映画は幾つもある。管理人が見たものだけ数えても‥ 1975年 テオ・アンゲロプロス『旅芸人の記録』(ギリシャ)230分 1994年 タル・ベーラ『サタンタンゴ』(ハンガリー) 438分 2003年 …
『あのとき売った本、売れた本』【20123.10.30. 光文社刊】を読んだ。 海外にも多くの支店を展開する大手書店の新宿本店で25年勤めた書店員小出和子さんの本だ。恵まれた環境で過ごしたことへの謙虚な感謝も忘れない著者の行儀のよさが心地よかった。ネット…
イマドキ 重 厚 長 大 はまったく流行らない。重大な題材、深刻なテーマはお呼びじゃない。もはや昭和でも平成でもないのだから。そう云われてしまったら、残念ながらロートルには返す言葉はない。では何が受けるのか? ゆるくて軽くてカワイイもののようだ…
諸般の事情で、ヤクザ映画は1980年代末ごろから、主戦場をVシネマに移して延命を図る仕儀に‥。さらにさらに諸般の事情の重なりで、21世紀以降は、時代劇ジャンルとともに風前の灯となって消えてしまいそうな雲行きだ。そんな中、記録の残り香として 二本のヤ…
若い若い頃から小林旭の方が好きだった。ユウちゃんよりアキラ、タフガイよりマイトガイ。 『キネマ旬報』1959年9月上旬号より この伊藤本には小林旭のロングインタビューが載っている。 担がれた御神輿、金看板、銀幕のスター俳優、お気楽な人気稼業だと思…
伊藤彰彦 著『仁義なきやくざ映画史 1910-2023 』【2023.8.10.文藝春秋 刊】 伊藤本にハズレなし。今回も読ませる。「ヤクザ=社会から弾かれほっぽり出された〈弱い〉人」という基本図式を根柢に据えて、丁寧な取材・渉猟を重ねた労作だ。ただ、表題からイ…
忘れられない漫画家は沢山いる。ほとんどは他界してしまった。また一人、訃報を知った。川崎ゆきおさん。管理人より三つ年下だった。全国区で知られた漫画家ではないが、若い頃から、貧乏臭い画風が大好きだった。生まれも育ちも伊丹市、昔々 梅田太融寺裏に…
久しぶりに地元の独立系シネコンに出掛けて映画を観た。(「独立系シネコン」という勝手なネーミングは、全国に5館を展開する比較的小規模小資本のシネコンという意味。他意はない。)平日の午後、145席のスクリーンにやっとこさ10人ちょっとの入りだった。…
師・伊丹万作の薫陶、若くしての黒澤明との出会いと別れ、数々のヒット作、花形脚本家としての名声‥ 父と子が旅する1974『砂の器』、大勢の男たちが歩く1977『八甲田山』 そして次には、女がひとり走りに走る1982『幻の湖』に突入する。へんちくりんな映画だ…
師・伊丹万作との会話 「脚本家にとって腕力が大事だということは、伊丹さんの基本なんだ。何となしに、僕は伊丹さんに教えてもらってたからね。伊丹さんに『特別な勉強の仕方があるんですか』って聞いたんだ。そしたら、伊丹さんはねえ、『いや、そんなもの…
忍 語録 引き写し:今回は「原作との向き合い方」。 1939 21歳 陸軍入隊 自著『複眼の映像 私と黒澤明 』【2006.6.25. 文藝春秋単行本 】の中で橋本忍が師匠 伊丹万作に「原作との向き合い方」を尋ねられたときの逸話。橋本ファンにはつとによく知られている…
「映画は、足し算でなく掛け算を目指せ」ということは、拙ブログでも何度か主張してきた。 今回は、『鬼の筆』 232頁 黒澤エピソード。 「通常は音楽を入れるところってのは編集を緩めるの。繋ぎ方の完成度をあえて下げる。そうすると、水がしみるように映像…
橋本忍が「戦後最大の脚本家」かどうかは知らない。興味もない。けど、けど、昭和期日本の映画が一番元気だった時代に一番活躍した「凄腕脚本家であり、破天荒にして偉大なる俗人」だったことは認める。春日太一本『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と…
早くに手に入れていたのに横に置いたままの「つん読本」だった一冊に手を付けた。 春日 太一 著『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』【2023.11.30. 文藝春秋 刊】 やっぱり映画本は、聞き取りインタビューがいちばん面白いことを再確認。とりわ…
用あって、昔の本の入った段ボール箱を漁っていたら、古文書を発見した。といっても歴史的価値のある代物なんかじゃない。管理人の若かりし頃の走り書きメモ。たぶん職場の先輩プロデューサーに夜の酒席ででも説教を喰らったときの反論だろう。若くて青い。…
困ったことに、お気に入りの現役小説家が女性ばかりになっちゃった。わけても新作が出ればチェックして読むお一人が桜木紫乃さん。『谷から来た女』を読んだ。【2024/6/10 文藝春秋 刊】 いやぁ手練れ。ますます腕を上げてる。(上から目線でゴメンナサイ)い…
数年前、「鉄腸野郎Z-SQUAD‼‼‼ 」というはてなブログを知った。勤勉な読者とはとても言えないが、「へーっ 映画の世界ってホントに広くって果てしないよな。もっとも地球上 いたるところで日々限りなく映画が作られ 賞玩消費されてる事は、紛れもない事実、…
数日経っても清水宏監督の映画『明日は日本晴れ』1948 の余韻が抜けない。 1948『明日は日本晴れ』製作:えくらん社 Filmarksには沢山の感想・映評が並ぶ。 奥行きの深さ(脚本もキャメラの構図も)、多重多層性、そしてもちろん時代背景・時代環境への言及も…
いそいそとMoMAK Films 2024 に出掛けて来た。小森はるか監督セレクションによる清水宏2本立+小森はるか『ラジオ下神白』 www.momak.go.jp清水宏贔屓か、小森はるか人気か、入りはまずまず。50席のうち40席余りが埋まっている。 1941『團栗と椎の實』は、Y…
濱口竜介 著『他なる映画と 2』【2024.7.1. インスクリプト 刊】の白眉は二つの書き下ろしだった。とりわけ、巻末に置かれた「ある覚書についての覚書」が圧巻。 「自分はあくまで「映画をつくりながら見る人」もしくは「映画を見ながらつくる人」 各所でそ…
誰もが、何時でも何処でも、自由に、比較的容易に映画を見ることが出来るようになった今でも、ずっと引っ掛かっているモヤモヤが二つある。 【モヤモヤ 其の壱】 映画は何度も見るものなのだろうか?一度見たら分かるのが一番じゃないのか。 もっとも、My Fa…
思えば、濱口竜介さんのことは何度も書いてきた。数え直してみたら2014年春からなんと26回も書いている。2024年7月、彼の全二冊の集成本が出た。【2024.7.1. インスクリプト 刊】 撮影所なきあとの日本映画界にあって、なおかつ「面白い」映画を作らんとする…
辻山良雄『本屋、はじめました』【2017.1.10.苦楽堂より刊行 のち増補版 2020.1.10ちくま文庫 】 大手の書店で働き、旗艦店閉店後に退社 44歳で東京西荻窪に〝Title〟という個人経営の新刊書店(本屋10坪+Cafe5坪+ギャラリー5坪)を開業した、その顛末・等…