2ペンスの希望

映画言論活動中です

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

映画から学ぶということ

岡本喜八監督の対談集「しどろもどろ」を読んでいたら、澤井信一郎さんがこんな発言をしていた。 「学ぶということについて言うと、映画というのは画面からでは学べませんよね。画面から学んだつもりでも、おそらく何も学んでいないのではないかと思います。…

映画のG(重力)

偽札づくりの濡れ衣から人生を狂わせられる青年を描いたヨーロッパ映画を観た。1983年R・ブレッソンが82歳で作り最終作となった『ラルジャン』。気楽に見られる映画だとはとても言えないが、心に残った。 管理人と同年代の映画評論家芝山幹郎はこんな…

キネマ館に雨が‥

昔々、あがた森魚のLP『噫無情(レ・ミゼラブル)』を繰り返し聴いていた時期があった。今でも、殆ど諳んじて歌える。今日はその中の一曲。 イントロにかすかに映写機の音が聞こえる。既にこの頃(1970年代半ば)から映画館は場末のノスタルジーの溜まり…

文体はないのに、物語はある

奇妙な体験をした。ある小説を読んだ。実在の人物を丹念に調べ上げ何年もかけて資料に当たって書かれた経済歴史小説上下巻だ。良質なモデル小説。 よく出来ていて面白かった。ただ、物語は面白いが「文学」とは違っていた。表現に美も力も感じなかった。新し…

『堅々嶽夫婦庭訓』

昨日書いた美術展では横尾忠則さんの1960年代のアニメーションが流れていた。 今日は、そのおすそわけ、二本立。 1965『堅々嶽夫婦庭訓』(かちかちやまめおとていきん=カチカチヤマメオトノスジミチ) 高橋睦郎の唄がいささか聞き取りにくいので、…

「天才ハ‥‥ヤッテ狂ゥ」

横尾忠則現代美術館 開館記念展Ⅱ「ワード・イン・アート 字は絵のごとく 絵は字のごとく」を観てきた。 気に入った絵は幾つもあった。 それほどではないが気になった 一点を挙げる。 1996 赤い絵画シリーズから 『天の足音』↓↓↓ 点描で「天才ハ 忘レタ コ…

「経験という牢屋」

昨日の「送る言葉」に続いて、今日は「迎える言葉」だ。東京造形大学諏訪敦彦学長の「2012年度入学式」挨拶。引き続きネットのページを挙げておく。 http://www.zokei.ac.jp/news/2013/001-1.html 「経験という牢屋」という表現がキイか。 どこまで今の十…

「我に帰る」

若い友人に教えられて、元映画監督・現東京造形大学学長の諏訪敦彦さんという方の2011年度卒業式の挨拶を読んだ。 悪くは無かった。真摯で誠実なお人柄が滲む「送る言葉」だ。 ネットで読めるので、ご興味のお方は、どうぞ。 http://www.zokei.ac.jp/news…

泉のような映画を作りたい。 汲めども汲めども尽きせぬ映画、あとからあとから思いが湧いてくる映画、 何度見ても溢れ続ける映画。奥にマグマを滾らせながら、表面はあくまで澄み渡った映画。非常識な方法で本当のことを語り、規格外の物言いで、人間の心の…

紙ヒ補遺 「待つ」こと「祈る」こと

歳のせいなのか、「追う」ことより「待つ」こと、「怒る」ことより「祈る」ことの重さを知るようになった。映画に対する味覚も変わった。 スピーディーでリズミカルで切れ味のいいアクションシーンの間に「何も起こらない」時間の堆積がある。行動を起こす前、行動と行…

面白さを手放すな

経験と実感に裏打ちされた言葉には説得力がある。 「ドキュメンタリーは劇映画の三倍面白くないと通用しない」と原一男さんは言った。 「ぼくが映画青年のストーリー否定論を、あまり信用できないのは、面白い筋を考えるより、否定するほうが、ずっと簡単な…

困難な時代

今ほど映画づくりが困難になっている時代はない。 昔に比べて機材は安くなった。機能も性能も上った。けど、映画の地位も役割も社会的期待値も没落した。町外れ、路地裏、場末にひっそりと棲息する隠花植物みたいなもの。過去の栄光にすがって何とか生きてい…

『少年』

1969年大島渚の映画『少年』 「少年のような」といえばおおむねは褒め言葉だ。初々しい・純真・無垢・ナイーブ・計算高くない。しかし、自らの経験に則して言うのだが、そんないいもんじゃなかった。姑息で度量が狭くてひがみ根性丸出しの部分もあった。…

『MAX mon amour』

1986年欧州に招かれてO島監督が作った映画『MAX mon amour』(マックス,モン・アムール)公開は1987年。 最近見直した。フツーに良く出来たフランス映画だったと改めて感心した。脚本はJean-Claude Carrière(ジャン=クロード・カリエール)撮影はR…

『明日の太陽』

世界のO監督が亡くなって、各地でレトロスペクティブ・回顧特集・追悼上映が企画されている。一挙ほぼ全作品上映(?!)といった謳い文句も見える。ネットを叩いていたら、こんなのを見つけた。O監督のデビュー作としては、題名について会社側と物議をかも…

冗談じゃない

冗談じゃない。 去年興行成績60億円を記録した漫画原作映画の原作料が100万円だったということで、「安過ぎ」「買い叩き過ぎ」だとかネット上で騒いでいるらしい。冗談じゃない。 当事者がその金額で納得して契約したのなら、傍がとやかく言うことは何もな…

紙ヒ拾遺 閉口

シネフィル諸君の発見主義・発掘主義には閉口する。こんな凄い奴を発見した。こんな良いのが埋もれていたのを発掘した。皆知らないだろう。オレ様だけが気づいた。エッヘン、と鼻高々だ。 長部さんも書いている。「映画を語る者がしばしば陥りがちな先物買い…

閉館

今日は、長部本とはまったく別の割り込みネタ。緊急号外というほどでもないが‥。映画館の閉館が止まらない。ちょっと前には京都の元Y座が店じまいした。今朝の新聞には東京・銀座の元C座が閉館したという記事が載った。読んだのはネットの(!)朝日新聞一紙…